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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

心に浸み入る色を求めて
塗装職人いろはにほへと

 
 

青は藍より出でて藍より青し

 
川﨑 御社は、若生社長のお父様も塗装職人で、家業を継がれた形でしょうか。
 
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若生 いいえ。父親はサラリーマンでして、私自身もあまり手先の器用な人間ではなかったです。この世界に入ったのは、仲のいい先輩が働いている塗装屋が近所にあって、高校を卒業したら自分も、と簡単な気持で弟子入りしたのがきっかけでした。
 
川﨑 でも、しっかり年季を積んで親方として一本立ちされたわけで、ご立派ですよ。職人の世界は厳しいから、半人前で終わる人間のほうが多いですからね。
 
若生 いやあ、どちらかというと私も逃げ出した口かな(笑)。二社目に勤めた塗装屋の親方が少々アバウトな人だったので、私が代わりに複数の現場の段取りとか道具や人の手配とかの全体を仕切らなくてはいけなくて、そっちでてんてこ舞いになってきて、これは一人でやったほうが楽だぞということになって独立したんです。要するに、いろんな塗装屋さんの応援に入って日当をもらう 「一本どっこ」 の職人として仕切り直しただけで、あまり独立したという感覚はなかったですね。
 
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川﨑 そうすると、今もお一人でされているわけですか?
 
若生 今は6名のスタッフを抱えています。独立当初は人を雇うまいと思っていましたが、知人の大工さんの弟が学校を中退してブラブラしていたので、「うちの仕事が忙しい時に手伝わないか」 と声をかけたんです。不思議なもので、2人でやっていると、だんだんと2人分の仕事が入ってくるようになるんですよね。気がついたら、6人の従業員を正規雇用する塗装会社になっていました。
 
川﨑 また、全体の仕切りに追われる立場に戻ってしまったわけだ(笑)。
 
若生 ただ、雇われている立場と経営者になった今とでは、仕切りのやり甲斐も全く違ってきますね。勤めていた時は、仕切りを任されていたといっても、材料のチョイスや設備投資などのお金に響くことまでは関われませんでした。「お金を出しても、もっと良い材料や道具を買ったほうが絶対いい!なんでここでケチるんだ」 と思っていましたね。
 でも、今は人の仕切りや段取りの工夫に加えて、経営者として材料や道具や設備のチョイスまで自分でできます。それが良くも悪くも結果として自分に返ってくるので、やり甲斐があります。