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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

既成概念を超える ニュータイプの建築家

 
 

プロジェクトの軸となるのは
住む人、利用する人の視点

 
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秋川 非常にユニーク、かつ一本筋が通った考えをお持ちになっている山下社長ですが、建築に対してどのような理念をお持ちなのでしょうか。
 
山下 建築に携わる者は、常に大きな責任を負う必要があると思っています。
 たとえば、1995年に阪神・淡路大震災が起こって6000人以上が亡くなりましたが、原因の9割近くは家屋の倒壊によるものだったんです。あの震災では僕も建築家の一人として責任を痛感しました。
 それで、建築家仲間に呼びかけて1年間、無料の相談会を開きました。それをきっかけに生まれたのが、1000万円台で木造住宅を造る 「Project1000」 というシステムです。この価格を実現するために、従来の慣習を見直してコストの透明化を図り、クライアントと設計・施工が一体になって取り組める住宅づくりを目指しました。今では全国的に展開できています。
 
秋川 先ほどのお話のとおり、「依頼者」 を含めてチーム一丸となって取り組むプロジェクトとなっているのですね。
 
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「エチオピア・ミレニアムパビリオン」 打ち合わせ。より良いプロジェクトを
求めて、現地での会議も白熱した。左側黒い服が山下氏。

山下 他には、2008年にエチオピアで 「エチオピア・ミレニアムパビリオン」 というプロジェクトを手がけました。エチオピア暦でちょうど2000年ということで、日本からプレゼントとして日本文化会館を造ろうという話になったんです。でも、よくあるようなコンクリート造りの建物にはしたくなかったので、島根県で朽ち果てそうになっていた古民家とエチオピアの現地で捨てられていた円形の住居を移築して造りました。
 
秋川 まさに、日本文化とエチオピア文化のコラボレーションですね。素敵ですね。
 
山下 エチオピアはアフリカで一番貧しい国です。水が汚染されて全体の3割程度しか飲めないので、館内には、まず水を浄化できるシステムを作りました。それに加えて、職業訓練ができる空間も作り、そこで製作したものを販売できるようにしました。
 
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秋川 素晴らしい発想だと思います。日本文化の会館だからって、着物を飾っても仕方ないですものね。
 
山下 せっかくのプロジェクトがお仕着せになってしまうと意味がない。ただお金を出す、施設を作るというだけじゃ一方通行になってしまいます。ですから、彼らの視点に立ち、彼らが本当に求めているものを渡せるよう、もっと知恵を出したいと考えていますよ。