今年で25周年を迎える国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」の主宰者でもある別所さん。もともと「得るものはない」と先入観を持って遠ざけていたショートフィルムだが、観てみると大きな衝撃があったのだという。映画祭を主宰するほどの情熱をうかがった。
良い作品を共有したい
お恥ずかしいことに、当時の僕はショートフィルムをバカにしていたところがありました。俳優として仕事をしている中で、ショートフィルムから学べるものはないだろうという先入観があったんです。でも、実際に観てみると頭をガツンと叩かれたような衝撃がありましたね。映画は長さじゃないというのを実感しましたよ。とても新鮮な表現方法があったり、その表現をサポートするカメラワークがあったり・・・。すっかり虜になってしまったんです。
短編映画祭を開催しようと思ったのは、僕が素晴らしいと感じたショートフィルムを多くの人にも観てもらいたいし、ほかの人たちはどんな感想を持つのか知りたかったからです。その気持ちは25年間ずっと変わりません。映画に関わらず、素敵なものを見つけたらほかの人に共有したいという欲求が生まれてくるものですよね。
ただ、映画祭の開催は大変でしたね。僕は俳優としてずっと働いてきたので、上映作品を探したり、スポンサーを探したりするにはどうすれば良いのかまったくわからない状態でした。企画書を書く、開催する場所をおさえるなどの下準備の大切さを知りましたね。普段自分が立っている舞台は、このように支えられていたんだとわかりました。
映画祭をつくり上げるには仲間と情熱が必要不可欠でした。良き仲間に恵まれたのは本当に幸運でしたね。そうして長年開催を続ける中で、フィルムがデータになり映写機がいらなくなったり、スマートフォンのみで撮影した作品が出てきたりと多くの変化を感じています。長編映画は構想3年、撮影に1年など長い時間がかかることが多いです。しかしショートフィルムの場合は、世界情勢や時代の変化がすぐに反映されるんですよ。そういったところも魅力の一つです。
演劇であれ、ショートフィルムであれ、とにかく飽きることがありません。「こんな表現方法があったのか!」「こんな良い作品があるのか」と感じる作品が日々生まれています。それを今後も、多くの方と共有していきたいですね。
(インタビュー・文 中野夢菜/写真 Nori/ヘアメイク 森川英展(NOV)/スタイリング 千葉良(AVGVST))
(取材:2023年3月)