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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
 
17歳のときに、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリおよびボルテージ賞を受賞した溝端さん。その翌年には俳優デビューを果たしている。10代の頃から俳優業界で働いてきた溝端さんに、当時のご経験について振り返っていただいた。
 

着実に実力をつけなければいけない

 
僕はもともと俳優に憧れていて、芸能界に進みたいと考えていました。ただ、家族からは反対されていました。高校生になっても無謀な夢を見ている僕に対して、姉が「これでダメだったら諦めなさい」とジュノン・スーパーボーイ・コンテストに応募してくれたんです。そこでグランプリを受賞したことが、この業界に入るきっかけとなりました。
 
ありがたいことに、デビューしてからは多くのお仕事をいただけました。ただ、お芝居に楽しさは感じられていなかったように思います。当時まだ10代の子どもだった僕は、多くの大人に囲まれて「この役はこういう考え方だから、こんな風に演じてね」と指示を受けて、言われた通りに動くことしかできなかったんです。常に大人の人たちの顔色をうかがいながらお芝居をしていたような気がします。
 
周囲の人たちが求める演技をしなければというプレッシャーもありました。仕事に楽しみを見出す余裕もなく、ただただ仕事を精一杯こなしている感覚でしたね。そうして3、4年ほど経ってふと振り返ったときに、自分には何もないと気付いたんです。お芝居に対して自信もないし、熱量もないし、才能もない。周囲の方々も、僕のことは俳優というより「ジュノンボーイの人」として認識していましたしね。
 
ジュノンボーイは、いわば宝くじみたいなものです。その宝くじで得たお金がなくなるのと同じように、周りの人が離れていってしまったように感じました。そのときに、ただ仕事をこなすのではなく、着実に実力や自信をつけていかないといけないのだと実感したんです。
 
 
デビュー当初はなかなかお芝居の楽しさがわからなかったと話す溝端さんに、その考えが変わったきっかけを聞くと、演劇との出合いだと答えてくれた。演劇と出合ったことで、演技に対する捉え方にも変化がでてきたのだという。
 

自分の中に軸がつくられた

 
お芝居に対する捉え方に変化があったのは、演劇との出合い、そして演出家の蜷川幸雄さんとの出会いがきっかけです。それまで、面と向かって演技を否定されたことはありませんでしたが、蜷川さんの指導はとても厳しかったんです。でも、ハッキリ言っていただけたことで、逆にスッキリできました。
 
映像作品は、どうしても撮影に時間制限があります。そして、一度OKが出たらそのシーンは終わりです。でも、演劇の場合は上演期間中に何度も同じシーンを演じることができますよね。稽古の時間も含めると、同じセリフを何千回と言うことになります。それだけ、芝居と向き合える時間が長いんです。
 
そうした経験を経て、演技を通じてさまざまな表現ができると知りました。それまで「周囲の人たちが満足する演技をしよう」という意識だったのが、「自分が何を目指しているのかしっかり自覚できていないと、人前に立ってお芝居をしてはいけない」と考えるようになりました。演劇や蜷川さんに出会えたことで、演技に対する捉え方の軸ができたと思っています。
 
演劇の楽しさを一言で言うと、ライブであることです。公演が始まってから千秋楽まで、同じ芝居は二度とできません。前日にうまくいったシーンがあっても、次の日にどうなるかはわからないんです。セリフを言う際のトーンが少し変わるだけで、芝居に変化が生まれます。そうした変化に、自分がどこまでついていけるのか。舞台上で演じながら、この芝居はどこに行きつくんだろうとワクワクしていますね。
 
何度も同じシーンを演じて、その違いを肌で感じているときが、一番「生きている」と実感します。公演中は毎日、「絶対に昨日より良い舞台にする」「自分のベストを尽くす」という思いで舞台に立っています。舞台はものすごい集中力とエネルギーが必要なので、達成感もひとしおです。