環境によって成長できた
愛される人柄であること
僕は当時から現場が楽しかったし、嫌だなと思ったこともないんです。それは、演技が大好きだったから。作品づくりの一員になれているのが、とにかく嬉しかったんですよ。「みんなで良いものをつくろう」という熱い思いが現場にはありました。それに、怒られながらも、スタッフの方々が僕をかわいがってくれているとわかっていましたからね。愛情も感じていたんです。
ある撮影が終わった後に「監督、ありがとうございました! 僕が伸びると思って叱ってくれたんですよね!」と挨拶をしたことがあります。そうしたら、「いや、お前バカだから! 普通に言ってもわかんないと思って」と言われました(笑)。
今でも覚えているのは、あるドラマを撮り終わった後の打ち上げで、スタッフさんが泣いていたことです。あの頃のドラマは、1作品が26話だったんですよ。だから、その分撮影も長くかかりました。その打ち上げで、職人気質の怖い雰囲気のスタッフさんが「楽しい現場だった」と言って泣いたんですよ。それを見て、チームで作品をつくり上げることの素晴らしさを実感しました。
僕は当時の雰囲気を懐かしく思ったり、今の環境を寂しいと思ったりすることもあります。でも、時代は変化するものですからね。当時学んだことを大切に、この時代でも仕事を楽しんでいきたいと思っています。今でも心がけているのは、ちゃんと挨拶をすることと、愛される人柄であることです。
スタッフの方に、「息の長い俳優になりたいなら、愛される人柄でなきゃダメだよ」と言われたことがあります。僕が還暦を迎えてもこの世界で活動を続けられているのは、それを意識してきたからかもしれませんね。でも、自分で「愛される人柄」って言ったらダメかな(笑)。