23年の野球人生で築いた
結果を出すための精神論
ボールを打った後にバットを高く放り投げる、豪快なフルスイングが代名詞の中村紀洋さん。選手時代にはそのスイングで本塁打王や2度の打点王に輝き、さらに中日ドラゴンズ在籍時には日本一に貢献し、日本シリーズMVPを獲得。また3塁手としても幾度となく賞を獲るなど数々の功績を残してきた。球団から離れ、自由契約選手となった後の2015年には「生涯現役」を宣言。「死ぬまでチャレンジし続けたい」と言う中村さんが、度重なる故障を持ち前のガッツで乗り越えてきた選手時代や、現在注力する野球指導・トレーニング指導について、晴れやかな笑顔で語ってくれた。
野球は精神力がカギ
23年間の選手時代を振り返ると、失敗を繰り返しながらも、全てにおいて自分で納得できるだけのことはしっかりとやってこれたな、と思います。特に2000本安打は球団を渡り歩いて様々な方にお世話になった結果、達成できたことなので、3本前あたりから感謝の気持ちが湧きあがってきていました。野球は1人では決してできないスポーツだし、大勢の方の支えがあったからこそプロとして活躍できた。その気持ちは今も心に留めています。
それから僕がバッティングで結果を残せたのは、日頃のメンタルトレーニングのおかげでもあります。良いバッティングをするためには、ただバットを振ってるだけではダメで、頭に良いイメージを描いたうえで、スイングすることが大事。そのために毎晩欠かさず、良いバッティングができた時の録画映像を見るようにしていましたね。その時のフォームを脳裏に焼き付けてから、次の試合に臨むんです。もちろん打席に立つ時もそのイメージを脳内で再生する。それをしなければ打てないくらい、僕にとっては大事なことでした。
結局、野球は常に自分との闘いなんですよ。「打てない」と思ったら打てないし、守備でも「エラーするかも」と思えば、エラーする。どれだけ強い気持ちで一球一球に向かえるかで結果は変わるんです。
もちろん倒れるくらいの肉体的な鍛錬も、特に若いうちはやらなあかん時期があります。でもそれを乗り越えてある程度技術が固まったら、そこから先はやっぱり、いかに精神力を鍛えるかがカギなんです。実際は鍛錬を積んでも、ホームランが出るかどうかなんて打つまでわかりません。僕自身、本塁打王を獲った時に初めて「これでホームランは打てる“気がする”」と思った程度。だからこそ、「打ちたい」、ではなく「俺は打てる!」と強く信じることが大切なんです。