B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

“ビジネスツール革命”を推進した男
Mr.ThinkPadが今伝えたいメッセージ

 
 
たゆまぬ努力により、日本は世界的な経済大国になった。しかし、今度は、「日本人は働きすぎだ」 というバッシングに、官民あげて国全体が、無自覚に反応してしまっているのではないか。内藤氏の懸念は、この点にまで及んでいる。
 
 

気付いてほしいメッセージ

 
 いつの頃からか、国も企業も一丸になって休日を増やしていきましたよね。頑張らないことを美徳とする風潮も目立つようになりました。休むことが悪いというのではありません。ただ、労働総量がイーブンなのに、バッシングによって稼働時間を削られると、必然的に競争力の低下を招きます。
 
120101_sp0032_ex05.jpg
 もちろん、モバイル機器を使いこなしてバランスよく仕事をされている方も多くいらっしゃいますから、私が言っていることは一般論の域を出ません。ただ、日本が海外との競争力に優位な立場をとるためには、少なくともバッシングをうまく逃れながら、仕事の総量を減らさないように工夫する必要はあるでしょう。そのための働き方を担保するものがThinkPadであってほしい。
 こう言うと、「内藤はセールストークであんなことを言っているのか?」 と思われるかもしれません。それは私にとって本当に残念なことです。ThinkPadの登場と進化によって、気付いてほしいメッセージのほうが流されてしまうことになるわけですから。
 日本人が自分で生産力を下げようとする風潮は、私には残念です。ThinkPadを生み出していなければ、こんな危機感は持たなかったもしれませんが、私は生みの親だからこそ、相対的に進みつつある日本の技術力・生産力の低下を心配しているのです。「日本の強みはそんなに多くないんだから、もっと頑張らないと世界に取り残されてしまうよ」 と伝えたい。でも、なかなか届かない・・・。ジレンマですね。
 
 
 
今や中国がめざましい経済発展をとげ、家電製品などの分野でも韓国を筆頭にアジア諸国の台頭がいちじるしい。日本は様々な経済指標で伸び悩み、アジアの雄としての面目はもはや失われてしまったのが実情だ。では、日本はポテンシャルも低下したのか? 「そんなことはない」 と内藤氏は力説する。
 
 

日本のポテンシャルに再び光を

 
120101_sp0032_ex06.jpg
 日本の技術者は、技術というもの自体に、とても真摯に向き合っています。ThinkPadの開発に携わったエンジニアたちもそうでした。自分たちを過信するわけにはいきませんが、金銭で仕事の価値を計るようなことはあまりないし、報酬以外の、使命感や達成感といった要素を非常に大事にしている。これはベテランの技術者も若い技術者も同じです。
 私は、この思いこそが、日本の生産力復興の核になると考えています。伝統工芸品の職人さんが一般の方々にどう思われているかを見てもわかるように、本来、日本は技術というものを社会全体でリスペクトする国でした。技術や生産性が発展していく土壌があるのです。
 ところが、2000年くらいから、どれだけ優れた技術が詰め込まれた逸品でも、安く買うのが偉いという風潮がはびこってしまいました。作り手側が損するくらいの値段で買ったら大成功という、おかしな主義が跋扈するようになりました。私は不思議に思ったものです。「どうして、自分たちの、日本の守るべき価値を、自分で否定するようなことをするんだろう?」 と。
 このような風潮への危惧を、私はいまだにぬぐい切れていません。今や、日本の技術を高く評価し、正当な対価を払ってリスペクトするのは海外諸国のほうです。日本人は再び、自分たちの技術力への誇りと、内発的動機で仕事に取り組む姿勢を、持ちなおさなくてはならないでしょう。24時間を仕事にあてられるようにするツールが普及したことで、相対的に競争力の逆転現象が起き、うかうかしていては日本は世界から取り残されてしまいます。このことを、ビジネスパーソンは肝に銘じておくべきでしょうね。
 
 

 

(インタビュー・文 新田哲嗣 / 写真 Nori)

 
  会社概要  
レノボ・ジャパン株式会社
  所在地  
東京都港区六本木6丁目10番1号 六本木ヒルズ森タワー 18階
  オフィシャルサイト  
 
 
 
 

 

スペシャルインタビュー ランキング