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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

個人価値が高まるクラウドを目指し
OKWaveが実現する幸福論

 
 
島に住むサルが土の付いたサツマイモをどのように扱うかを調べた研究から提出された、「サルのイモ洗い」 あるいは 「100匹目のサル」 という学説がある。ある特定の行動(芋を水で洗って食べる) が限られた母集団の中で臨界値を超えて広まったとき、それが物理空間を超えて種全体に一気に伝播したとされるこの説は、実証性やデータの真偽が疑問視されるいっぽうで多くの人々を惹き付け、支持されてきた。この話を引きながら、兼元氏は 「100匹目のサル」 のような動きがビジネスの世界にも現れていると唱える。それはあるいはNPO的なものであり、メセナ的なものであり、情報ビジネスの世界ではクラウドソリューションという潮流になって明確に表れてきているというのだ。
 

集合知が主流になってきた時代

 
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 実は、これこそ最初にOKWaveがやろうとしてきたことなんです。つい先日も、日本テレビさんの 『検索@ベストアンサー』 という特番で、Q&Aサイトについて話題になっていました。それを見ているときにふと思ったんです。「OKWaveだけでなく、広く集合知が認知され、みんなの日常感覚の中に取り込まれてきているんだな」 と。つまり、多くの人が 「知識を共有する」「知によって助け合う」 ことの重要性を感じ、それを尊重する度合いが共通になってきているのです。
 OKWaveの場合は、一人の質問者に対して回答が数多く入ってくる。中には一つの質問に300~400もの回答が寄せられることもあります。わかりやすく言うと、「ちょっと教えて」 という質問に、多くの人が 「僕は、私はこうしているよ」 と意見を出し合うことで、より真実に近い回答を導き出せる仕組みなんです。
 クラウドの本質は 「知性の補完」 と言えるでしょうか。OKWaveのような質問サイトだけでなく、SNSなども含めて形成される集合知の仕組みが、「サルの芋洗い」 のように、今、一気に人類に広がっているのだと感じています。
 現在、弊社はその流れを受けて、中国とアメリカでもサイトを構築しています。今年中に世界100カ国10言語にてOKWaveのサービスを展開する目標もあります。集合知を拡大させるためには大きな壁がある。言語は大した壁ではありません。それは文化ですよ。もっと言えば、文化への無理解ですよね。宗教や思想の面での対立も見えてきます。
 ただ、オウケイウェイヴの役割はそれを中和することではありません。あくまで質問者と観察者が判断するようにしなければ、真にクラウドソリューションの役割は果たせませんから。通念として「答えが正しいか否か」だけを重要視するのではなく、「この人にとって、この答えはありがたかった」 という導きをすることが、私たちの役割だと考えているのです。

 

 
 だが、さしものオウケイウェイヴも、現在のようにクラウド概念が一般化してくるまでには、多くの苦労を味わってきたという。今のような知名度や企業価値を持つまでに、会社として、サイトとしてどのような過程を経てきたのだろうか?
 

価値観の変化をリードしていく

 
 スタート当初は、やはり 「質問サイト? それって何?」 という目で見られており、ユーザーからも、ネットコンテンツの市場からも距離があったことは否めません。それこそ 「サルのイモ洗い」 のように、少しずつ伝わっていって、ハブとなってくれる人々が 「これは役立つな」 と実感してくれた瞬間に、一気に広まっていったと思うのです。たとえば商品販売の会社ならば広告を打つとか、キャンペーンを行うことで、ホップ・ステップ・ジャンプの 「ジャンプ」 が行えると思いますが、私たちの場合は、弊社の人為的なプロモーションありきではなく、ユーザーの同時多発的発見が何度かにわたってあったのだと考えているのです。
 初期の頃などは、本当に目を向けてくれませんでしたよ(笑) 就職活動中の学生に対しての企業説明会などをしていてもわかりました。会場は企業ごとのブースに分けられていて、私たちも一つブースを借りて座っていたんですね。で、隣が携帯電話か何かのサービスの会社だった。そのころ携帯電話は非常に関心の高い分野であったわけで、当然ながら長蛇の列ができるんです。ですが、私たちがやろうとしていたビジネスには、彼らは全く関心を示してくれない。閑古鳥ですらどこへ行ったのやら、と、そんな感じでしたね(笑)。
 ただ、最近になって急に話を聞きに来てくれる人数が増えてきた。もちろん会社が一定の成長をしてきたこと、認知度が高まってきたこともあります。ユーザーの質問の一つが発展して、『今週、妻が浮気します』 というタイトルでドラマ化されたケースもありました。でも、それらが決定的とは言えなかったのに比べて、今はシンクロニシティ(集合的無意識) のように、OKWaveのような取り組みが社会共通の取り組みになってきたとしか言えない動きがあるんですね、見ていると。
 それはまさしく、社会において急激に価値観の変化が起きているということだと思うんです。「お金を稼ぐことだけが目的になってはいけない」 と再確認され、「なぜ自分は社会に接するのか?」 という問いかけが増え、働く目的の再認識も行われた。全部自然な流れだったんですよ。そうした社会の流れを自分たちだけで変えたとは言いませんが、オウケイウェイヴの例が大なり小なり影響を及ぼしてきたことは間違いないと思います。私たちはそこを目指してきたし、時代に求められるサービスを続けていると自負しています。
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(インタビュー・文 新田哲嗣 / 写真 久保明子)
 
 
 
 会社概要 
株式会社オウケイウェイヴ
 本社所在地 
東京都渋谷区恵比寿1-19-15 ウノサワ東急ビル5階
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