欠端　先ほども言ったように、各工程の一つひとつに対して決して手を抜かず、丁寧に行うことですね。例えば、塗装前に金属の表面を溶剤で洗浄して、油脂や汚れを落とす作業があります。ここで少しでも油脂が残ってしまっていると、あとから塗装が剥がれてきてしまうんですよ。ほかにも、塗料が付着してはいけない部分をテープでマスキングする作業や、パテで段差や隙間を埋めて塗装面を平滑にする作業も行います。これらの下処理をしっかりと行うことで、塗料が剥離せず長持ちし、そのうえ美しい塗装面を仕上げることができるんです。
 
石黒　塗装の品質と美しさを保つためには、入念な準備が重要なんですね。欠端社長が就任されてから、品質や働きやすさがより向上したとお聞きしました。このような業界では女性社長はとても珍しいのではないかと思います。欠端社長はどのようにして現在のお仕事をすることになったのか、その経緯をぜひ教えてください。
 
欠端　実は私は、この会社にはもともと経理担当として入社しました。しばらくして、経理担当として会社の資金をしっかりと管理するためにも事業の全体像を知る必要がある。そのためには、現場での経験を積む必要があると考え、工場での下処理や運送業務などに携わったんです。そのうちに、現場での業務に対してさまざまな課題が見えてきました。そして一つひとつの課題をクリアし、業務改善に取り組んでいくうちに、継続してご依頼をいただける取引先の方も増えていったんです。そんな中で、現在の会長である前社長に、業務改善の成果や取引先との関係性を築いた部分などを評価していただき、二代目として会社を任せていただけることになりました。