狩野　大阪府堺市の食肉加工会社、デアイ商会さん。出合社長はお父様から引き継がれて二代目だそうですね。
 
出合　はい。もともと私は父の跡を継ぐ気がなく、大学を出て医療機器メーカーに就職しました。でも、いつか継がなければならないという気持ちもあったので、27歳の時、結婚を決めたタイミングで会社に入ったんです。
 
狩野　別の業界からお父様の会社に入ってみて、実際どうでしたか？
 
出合　初めのうちは「後継者だからやっているだけだ」という思いが拭えず、モチベーションも上がらず、ただただ働くだけでした。父が退いていよいよ経営のトップに立った頃、価格競争に負けて多くの契約を失い、ガクッと売り上げが落ちてしまいまして。試行錯誤しながら頑張っていたところに、コロナまでやって来て大赤字を出してしまったんですよ。
 
狩野　二代目に就任したばかりで試練が訪れたと。その後どうやって乗り越えたのでしょうか？
 
出合　その一件で経営スキルを身につけなくてはならないと痛感したので、経営について学び直そうと経営塾に入りました。知識や人脈を増やしつつ、学んでいく中で考え方が変わっていき、提示された価格に合わせる売り方をやめて、自分たちが売りたい価格で勝負してみようと方向転換したんです。価値をわかってくれる人に販売すると切り替えてからは利益を上げられるようになり、経営も持ち直しました。父の代からクレームを出したことがないという長年の信頼のおかげでもあり、父には感謝しています。辛い時期を支えてくれた家族やスタッフにも感謝していますし、ただただ働いていた当初とは違い、今は「もっといい会社にしたい」という意欲に溢れています！