川﨑 私は不動産業界に入ってからしばらく、マンションデベロッパーとして建設用地の取得などを手がけてきました。そのときから、不動産価格の決め方はアナログな印象があったんです。土地を仕入れるのは何十億もかかる投資ですから、事前に建設予定地の近隣エリアの最近の事例を探して、相場を調べるんですよ。ただ、新築の事例はあまり数が多くないんです。
水野 大きなマンションが次々に建つことなんて、そんなにないですものね。
川﨑 しかも、せっかく事例を見つけ出せても、それぞれ、駅から近いから、眺望がいいから、などの理由で他よりも価格を上げたり下げたりしている感じで、データというより漠然とした感覚で決定されているように感じていました。
水野 確かに、買う・借りる側の私たちも何となく、そのような感覚で選んでいる部分が大きいかもしれません。
川﨑 そこを個人の感性ではなく、より多くのデータを集めて科学的にアプローチしたいという思いがありました。それで目をつけたのが中古市場です。中古マンションであれば、新築よりも過去の取引事例が多数ありますから、蓄積されたデータから統計的な目に見える査定方法を導き出せると考えました。それで試行錯誤しながら、2019年頃年に独自の査定方法で特許を取得しましてね。といっても奇抜なものではなく、基本的には統計学の手法である回帰分析を取り入れた方法です。
水野 回帰分析とは、何だか難しそうです。
川﨑 回帰分析は、統計学においては基礎的な手法で、さまざまな業種のマーケティングにおいて活用されています。当社においては、物件の築年数や階数、駅からの距離など、中古マンションの価格を決める18項目の条件において、今までの購入者が何を重視したのかを統計的に判定しているんです。築年数が1年経過したら価格がいくら下がるのか、駅距離が1分近ければ価格がいくら上がるのか、それらが「見える」ようになります。