矢部　仁志社長のように腕利きの職人になるためには、何が一番大切でしょうか？
 
仁志　やったことのないことにも、まずは取り組んでみることでしょうね。よく「経験がないので･･･」と尻込みする若者がいますが、結局は今挑戦するのも5年後に挑戦するのも一緒なんです。なら、早いうちにいろいろとトライして、自分の得意分野を見つけたほうがいいんですよ。それが独立後の強みにもなりますから。
 
矢部　え、ちょっと待ってください。自社の職人さんが独立することまで見すえているんですか？　独立できるほど優秀な人材が流出しちゃうと、会社には損なのに･･･。
 
仁志　その分、横のつながりが生まれるのでいいんです。だから技術もノウハウも惜しみなく教えますよ。他社では、吹き付けで用いる特殊な機械のメンテナンス方法を、独立を防ぐためにあまり教えないと聞きますが、私は気にせず「やってみるか」と言いますね（笑）。
 
矢部　いろんなことに挑戦させてもらえるんですね。社長だけが良い思いをしようとしない、仁志社長のスタイルは素晴らしいです！　だから職人さんも頑張ってくれるんじゃないでしょうか。
 
仁志　そうかもしれません。モチベーションアップになればと、受注金額の明細も社内でオープンにしています。「この扉を塗ったらいくらになるのか」ということがわかれば、給料を稼ぐために何枚の扉を1日で塗る必要があるかもわかりますからね。また、もし独立した時に仕事単価の相場を知らなければ、不当に安い金額で仕事を受けてしまう可能性もあります。ですから仕事とお金のバランス感覚を養う狙いもあるんですよ。
 
矢部　独立後も長く仕事を続けられるように、という仁志社長の親心を感じます！　そこまで経営の内情を知れば独立の大変な面もあらかじめわかるので、軽い気持ちで独立して失敗する、なんて悲劇も避けられそうですね。