伝統を守りつつ進化する
武道・格闘技用品
アメリカ留学で培った精神力
城 老舗の3代目ということで、幼い頃からプレッシャーがすごかったのではないかと拝察いたしますが、いかがでしたか?
磯 一人っ子だったのですが、「継げ」と言われたことは一度もないんです。のびのびと育ててもらいました。ただ、お小遣いはもらったことがなく、「自分で使うお金は自分で稼ぐ」という教育でした。
城 ご両親の教育によって、お金の大切さや経営者としてのマインドが知らず知らずのうちに育まれたのかもしれませんね。学校を終えてから今に至るまで、どんなご経歴を歩んでこられたんでしょう。
磯 昔からアメリカに憧れていたこともあり、留学したいと思っていまして。すると父が「知り合いの空手の先生がアメリカにいるから内弟子になったらどうだ」と提案してくれたんです。格闘技は未経験でしたが、おもしろそうだと思い即決しました。
城 日本でなくアメリカで初めて空手を学ぶというのは珍しいな。しかし、内弟子というのは辛そうだ・・・。
磯 そうなんです。内弟子をさせていただいた大山泰彦先生は極真空手の創始者としてあまりに有名な大山倍達氏の弟子で、「四天王」と呼ばれた方です。厳しい修業を耐え抜いてこられた方で、精神論を非常に大切にされていました。だから私たちも朝から晩までずっと修業でしたね。内弟子ですから、先生のご自宅やトイレの清掃、食事づくりもやっていて、休む暇がなかったです。あまりにハードなので、「話が違う」と父に電話したこともありました。
城 聞いているだけでも大変さが伝わってきます。お父上は何ておっしゃいました?
磯 「男ならやり通せ」と一言。そこからは父を見返す気持ちでさらに頑張るようになりました。
城 きっとお父上は、突き放せば、磯社長が真剣にやると考えたんでしょう。父親って、子どもの性格をちゃんとわかっていますからね。かつて僕も、父に半ば強引に鹿児島実業高校へ進学させられて、そこで監督や先輩から厳しく指導されましたよ。髪も、伸ばしていいと聞いていたのに、入学後すぐに丸坊主にさせられました。後々監督から「厳しい指導も、頭を坊主にさせたのも、全部お父さんから頼まれたことだ」と聞かされました。僕がサッカーに集中できるように、甘えが出ないように、父は考えてくれていたんですね。
磯 私も父に感謝しています。アメリカでの厳しい毎日を経験したからこそ、どんなことにもへこたれない精神力と自信が身につきました。