人々の財産を守るべく
地図を相棒に境界を糺す
バックパッカーの経験が生きる
前園 先程、家を購入された時に初めてこの仕事を知ったと言われましたね。すると、当時は別の仕事に就いておられた?
平田 はい。南米に長く滞在した経験があるので、外資系金融機関で語学を活かした仕事をしていました。
前園 えっ、南米に? 私もブラジルのサントスに1年ほどいたんですよ!
平田 存じていますよ(笑)。私が南米にいたのは、前園さんがサントスに来る少し前くらいです。まだポルトガル語は覚えておられますか?
Muito prazer! Tudo bem?(はじめまして! 調子はどう?)
前園 Bem. E voce?(いいね。あなたは?)
平田 Muito bem! obrigado!(うん、私も!ありがとう!)
前園 もう、このあたりで勘弁してください(笑)。ポルトガル語なんて久しぶりですよ。でもどうして南米に?
平田 バックパッカーとして旅をしていたんです。小学生の頃から授業そっちのけで世界地図を見るのが大好きでしてね。いつかアマゾン川に行ってやるぞ、とたくらんでいて、その夢を実行に移したんです。
前園 ふむ、地図を見るのが好きだったと・・・。だったら、今のお仕事も夢の延長みたいなものじゃないですか?
平田 その通りです。趣味と実益を兼ねた素晴らしい仕事に巡りあえたと思っています。なにせ、登記所に残っている公図というのは明治時代につくられた地図が多い。他にも、旧家に代々伝わる古地図を調べて野山に入るなんてことが多いんです。実際に古地図通りに境界杭が見つかったり、なかなか見つからなくて、目星を付けて掘ってみたら境界杭が現れたり。地図と自分の足を頼りに大切な物を探し出す「宝探し」のようなおもしろさがあります。
前園 話を聞いているだけでワクワクしてきますね。でも、仕事ですから楽しいことばかりではないでしょう。
平田 そうですね。特に独立当初はリーマンショックの後で仕事がなく、顧客を開拓するためにあちこち頭を下げて回りました。営業に行っても「懇意にしている先生がいる」と断られるのはいいほうで、門前払いや、渡した名刺を挨拶して退室する前に捨てられることありました。
前園 うわっ、それはひどい。僕も今は個人事業主のようなものなので、ゼロから基盤をつくる苦労は共感します。しかし現在は経営も安定しておられる様子で、よかったですね。