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コラム 世界珍写行の発想術 vol.15 世界珍紀行の発想術 クリエイティブディレクター

コラム
 
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ブレーメンの音楽隊が
悔しがるピアノ
 
 
 
子どもの頃、読んだ童話ってあるよね、
日本の昔話や、アンデルセン童話やイソップ物語や、その他いろんなやつ。夢中になって読んだり聞いたりしたけど、その登場人物やその世界が現実とはもちろん結びつかない、ていうか、そもそも空想の世界だと子ども心に思っている、そうは言っても作り話だよね、ふふ。とか鼻で笑いながらさ。
 
でもね、日本中を旅したり、世界を旅したりしていると「え?」 これって実在したの? あの人は実在したの? て感じの驚き、たとえば、もうね、比較にならないほどでっかい例で言えば
シュリーマンの「トロイの木馬」的な驚きにたびたび出会う。
 
あ、彼の場合は、伝承を真実だと信じてトロイの遺跡を発見したわけだけど、そしていまネットでシュリーマンと検索したら「シュリーマンは1865年、日本の横浜へ来ていた」て記事を発見した。
え? え?? えぇぇぇぇ???? シュリーマンて実在したのw?
てのは冗談として、ペリー来航から12年後らしい。横浜港に着いたとき「ふたりの官吏が来て「オハイヨ(おはよう)」と言って、地面に届くほど頭を下げて、その姿勢を30秒ほどつづけた」と書いてるらしい。
 
この原稿を書いたおかげで、おもしろい話を知ったよ。偶然とは言え、こんなふうに発見は発見を呼ぶよね。
 
 
えっと、なんの話だっけ? あ、そうそう。でね、前回も書いたけど、一昨年、ひとりiPhone片手にレンタカーで中央ヨーロッパを走ったとき、Google マップにドイツのブレーメンを見つけた。
もちろん「ブレーメンの音楽隊」でしか知らない町。そこに何があるかもわからないけど、アムステルダムへ向かう途中の町としてブレーメンに泊まった。
悠久の石畳、厳めしい建造物、まさにヨーロッパの町という面影。ヨーロッパのどこにでもあるように大きな広場があり、名前はマルクト広場、そこにブレーメンの音楽隊の立像があった。
物語で、オバケになりすまして泥棒たちを撃退するシーンのように、一番下はロバ、その背中に犬、その背中に猫、その背中に鶏。世界中から来ている観光客が写真を撮っていた。
 
 
実は、ご覧の写真もそのマルクト広場なんだけど、ブレーメンの音楽隊が写ってはいない。僕なりに今回驚いたのは、その荘厳な市庁舎やゴシック様式の大聖堂などに囲まれる広場の中央に、
グランドピアノが設置され、そしてひとりの男性が音楽を奏でだしたのだ。
旅人として、その広場にいた僕は、ほんとうにほんとうにジ~~~~~ン! としてしまったんだよな。あまりにもふさわしい。
 
僕は音楽に疎くて、こんなことがよく行われているのかはわからない。野天でやる? グランドピアノって。グランドピアノって設置、めんどくさいんじゃなかったっけ? 雨降ったらどうすんだろ? 
でもでも、このドイツの国、ブレーメンの町、足下も壁面もゴツゴツして一片の愛想もなく歴史を見てきた石に囲まれた広場で、グランドピアノひとつの音が、ここまで響き渡って、そして人々の足を止め、喝采を受け、そしてこころを震わせる。
もちろん、モノ好きが勝手にピアノを持ってきて勝手に弾いたとは、広告屋の僕はさすがに思わないよ。場所の許可はいるし、ひょっとするとオーディションまであったプロモーションかもね。
 
でも、この広場に、ギターやバンドや歌でなく、グランドピアノってのがとても大胆な感じがする。そんで、また、天井のあるホールとかでなくて青空の下、荘厳な広場に響き渡るピアノの音がグッとくるし、その曲も良くてさ、
おれ、買っちゃったもん、自家製プリントしたまったく無名の彼のCDを。
 
 
 
ちょっと舞台を変える、枠組みを裏切ってみるだけで、
なんとなく手垢のついたモノ、見慣れたモノが、突然、バツグンに輝き出すことがあるよね。
すっかりブレーメンの音楽隊像のまわりは閑古鳥でさ
悔しがってたもんな、とくにいちばん重い下のロバが。
 
 
 
 
【今回のキーワード】
ステージを
変えてみると
褪せた色も輝く
 
 
 
 

 執筆者プロフィール 

永澤仁 Hitoshi Nagasawa
クリエイティブディレクター/run!run!! planning!!! 海の家 店主

 
20140319cl_38ex02.png もったいないワタシの売り方

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 経 歴 

セブン-イレブン(忌野清志郎さんが歌うブランドの根幹を担う「近くて便利」コミュニーケーション)、バイク王(雨上がり決死隊バージョン)、キリン氷結(発売から6年間)、シチズン(広告&商品開発)など数々のクリエイティブを責任者として手がけ、そのすべてをジャンプアップさせた実績を持つ。競合プレゼンでは独創的なスタイルで3年半無敗を記録。受賞歴は国内外100以上。強い、正しい、面白い! 国も地域も企業も商品もお店も人も、めざすゆたかな高みへ。

オフィシャルホームページ  http://umino-ie.jp
フェイスブック (個人) https://www.facebook.com/hitoshi.nagasawa.35
フェイスブック (海の家) https://www.facebook.com/uminoie777

 
 
(2015.3.25)
 
 
 

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