B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

「人生100年時代」がうたわれる近年、これまでに得た経験やスキルを活かし、新たな仕事に挑戦するシニア世代の人材に注目が集まっています。少子化の影響により、若年層の労働人口減少や人材不足が深刻な社会問題となる中、豊富な経験を持つシニア人材は、多くの企業にとって貴重な存在であると言えるでしょう。
 
そこで本連載は、シニアのセカンドキャリアをサポートする企業・団体の取り組みを紹介するとともに、シニア人材を活かすためのヒントや情報を探っていきます。
 
今回は、長きにわたり経験を積んだシニアを“専門家”として位置づけ、経営課題を抱える企業をアドバイザーとして支援する「生涯プロフェッショナル事業」を行う、株式会社クオリティ・オブ・ライフの代表取締役・原正紀(はら まさのり)氏に話を聞きました。
 
 

ホワイトカラー系のシニアが活躍する場を

 
原氏の著書『定年後の仕事は40代で決めなさい』
原氏の著書『定年後の仕事は40代で決めなさい』
――御社は人材開発やセミナー事業を主に手がけているそうですね。その中で、シニアを対象とした事業を立ち上げた経緯をお聞かせください。
 
転職・キャリア支援など、一般的な現役世代向けの人材系サービスは飽和状態となっています。一方、高齢化でシニア世代が増加し続けていく中、私はシニア人材をもっと活かさなければならないと以前から考えていました。
 
2011年11月に、かつて経済産業省の大臣官房参事官を務め、2019年現在は兵庫県南あわじ市の市長でいらっしゃる守本憲弘(もりもと かずひろ)氏との共著で、『人生二毛作社会を創る』という本を出版したんです。ミドル層が経験を活かし、定年後のキャリアを築くことを論じたのが、本書の「二毛作」という考え方でした。ただ、書籍を出版した時点では、弊社はそれに見合ったサービスを見出せてはいなかったのです。
 
その後、2014年に中小企業庁が主に大手企業で経験を積んだシニア人材を活かし、中小企業を支援する事業を立ち上げました。それを弊社が受託して始めたのが、現在の「生涯プロフェッショナル事業」の前身となったわけです。
 
――生涯プロフェッショナル事業では、シニア人材を“専門家”や“プロフェッショナル”として位置づけ、企業支援を行っているそうですね。どのような方が活躍しているのでしょうか。
 
とても多様な方々が活躍しており、中でも経営や管理などのマネジメント力を活かせる方が多いですね。というのも、製造業や建築業などで技術を身に付けたブルーカラー系の職業の方は、定年後も自身のスキルを活かして長く活躍できます。しかし、ホワイトカラー系の管理職や営業職を経験してきた方は、身に付けたスキルを活かす場がほとんどありませんでした。せっかくの経験を持て余してしまうのは、非常にもったいない。ですから、それを活かせる場をつくろうと考えたのです。
 
そこで本事業では、企業とシニア人材とのマッチングを行っています。例えば、地方の中小食品メーカーなどは、良い商品を開発しても、全国展開するための販路やノウハウがない場合がほとんどです。一方、大手の食品メーカーでブランドマネージャーなどの経験がある方は、販売や宣伝のノウハウを持っています。そのような専門家が力を貸せば、販路開拓をはじめ、商品のPRやマーケティングなども効果的に行えるわけです。
 
 

シニアならではの強みを活かした人材育成

 
――お話から、経営コンサルティングのような印象がうかがえます。コンサルティング業との差別化や、この事業ならではの特長をお聞かせください。
 
一般的なコンサルは、あくまでも外部の視点から意見を述べ、経営を支援します。対して、本事業はシニアの専門家と企業とが共に汗をかき、一緒に課題を解決していくのが最大の特長です。また、弊社もシニア人材の専門家と契約しています。自らがモデルケースになることで、本事業の信頼性向上にもつながると考えています。
 
――シニア人材を求める企業は、どのような課題を抱えているのでしょうか。
 
すべての中小企業が複数の課題を抱えていると言えます。しかし会社によってケースは異なるため、一概には言えません。ただ、経営課題の解決は、言わば一時的なもの。ですから、企業としては経験豊富なシニアから得られたノウハウを社内に根付かせてほしいと期待しています。そこで若い人材を育成しながら課題解決に取り組むなど、さまざまな方法で成果を上げています。
 
 

個人の生活の質を高めるために

 
――これから定年を迎えるミドル層への支援についてはいかがでしょうか。
 
本事業は概ね50代以降を対象としています。でも、最近は40代から参加なさる方も増えてきていますね。私はなるべく早い段階から、定年後のキャリアを考えるのが正解だと思います。
 
そのような社会人向けに、今年の4月に『定年後の仕事は40代で決めなさい 逃げ切れない世代のキャリア改造計画』という書籍も出版しました。年金などの社会保障がアテにできなくなる、いわゆる“逃げ切れない世代”を一つのテーマとしています。内容的には30代にも、定年間際の方にも読んでほしいですね。ただ、オススメはやはり40代です。長く働くためにはどうすべきか。自身の活躍の場をどう開拓していくか。それを考えるのに最も適した年代だと思います。
 
――最後に、社会全体として抱える人材への課題解決について、お考えをお聞かせください。
 
2つポイントがあります。1つは企業の人材不足。国内の人口減少が続く中、今までのように若い人材を採用するのは難しくなるでしょう。近年は生産性を確保するためにAIやロボットの活用も積極的に研究されていますよね。しかし、完全に実用化されるまでには、時間がかかります。そこで、即戦力であるシニア人材を活かすわけです。
 
もう1つは、社会インフラ。人々がより長く働けるような社会にしなければなりません。人は仕事をやめると衰えてしまいます。仕事は、体も頭も使うし、気も使う。だから、健康維持にはとても良いことなんですよ(笑)。ただ、定年前のようにバリバリ働く必要はありません。自分のペースで、働きながら余暇を楽しむ。そのように、個人の生活の質を高めていくのも重要だと考えています。
 
 
■株式会社クオリティ・オブ・ライフ
https://www.qol-inc.com
 
■生涯プロフェッショナル事業
https://2nd-pro.com
 
■『定年後の仕事は40代で決めなさい 逃げ切れない世代のキャリア改造計画』(徳間書店)
http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198647810
 
 
人生100年時代におけるシニアのセカンドキャリア vol.1
生涯プロフェッショナル
(2019.6.7)

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事