コインランドリーが増えた!
まず違う点は乾燥機のほうが多いこと。店内3面が使えるとしたら、1面は乾燥機だけで占めているコインランドリーも珍しくありません。あとは洗濯&乾燥機と、布団などの大物洗いもできる大型の濯&乾燥機。昔ながらの縦型の、洗濯しかできない機器を置いてあるコインランドリーは、むしろ少数派です。
中にはちょっとしたカフェスペースを設けて、洗いあがるまでの待ち時間をコーヒータイムにしてもらえるようにしたコインランドリーもあります。もっと思い切って隣のカフェとつなぐなどして飲食店と一緒にした業態は、「ミックス」と「レストラン」を掛け合わせて「ミクストラン」と呼ばれています。
お店が工夫している
また、最近はコイン不要のコインランドリーも始まっています。今までのコインランドリーは「100円玉いくつ」で料金を設定していましたが、スマホアプリでキャッシュレス決済に対応すれば、100円より細かい単位で料金設定が可能です。関東を中心に展開するコインランドリーフランチャイズチェーンのwash-plus(ウォッシュプラス)では、さっそくこの特性をダイナミックプライシング(需要に応じて料金を変える変動価格制)に応用し、天候による乾燥需要の増減に左右されないコインランドリー経営を目指しています。
メーカーが頑張っている
コインランドリー機器大手のAQUA(アクア)とTOSEI(トーセイ)が近年力を入れるのは、ともに「布団洗い」です。日経クロストレンドの昨年の記事(コインランドリーがふとん丸洗いに活路 市場規模は4000億円?)によると、AQUAは20年ほど前から布団丸洗い機能の開発に着手。従来コインランドリーでは洗濯が難しかった羽毛布団と敷布団のそれぞれに、専用のコースを開発しました。
AQUAが大型の洗濯&乾燥機に「羽毛ふとん専用コース」搭載の新機種をリリースしたのが2020年4月。この機種を導入した店舗では、導入前と比べて売上が1.3倍になったケースもあるようです。
また、他の布団より中身が詰まって厚い敷布団は、洗濯すると水を含んで重くなり、乾燥させるときに大変でしたが、敷布団専用乾燥機の新モデルは台車の高さを低く設定。身長163㎝前後の人でも布団を台車にかけやすくなりました。「布団洗いは男の仕事」と旦那さんが休日に張り切っていたのは昔の話。これからは奥さんが、好きなときに一人で敷布団をコインランドリーに洗いに行けます。
また、TOSEIは布団に「リフレッシュ」でアプローチしています。昨年8月に販売開始した新モデルFRDG-150Cは、山型の台車に敷布団やマットレスをかけて機械に入れるだけで、高温スチームで布団の中まで殺ダニ・除菌。コースを選べば消臭・乾燥までやってくれます。
AQUAもTOSEIも、「布団メンテナンスは天日干しが一番」と考える昔からの天日干し信仰に転向を迫っていると言えそうです。
コインランドリーは成長産業
認定されるためには過去10年か今後10年のいずれかで市場規模が10%以上拡大することが要件ですが、最近20年で店舗数は2倍に増加。現在は2万2000店を超えていると言われます。
また、洗濯労働市場という見方で見ると、コインランドリーはまだ市場全体のわずか2%しか占めていません。8%がクリーニング店、残り90%は家庭です。現状各世帯で洗濯機を回して、物干し竿に干してまかなわれている洗濯労働が、仮に全部有料サービスに置き換われば、4.7兆円ぶんの市場が国内に生まれると試算されています。
家庭用衣料用洗剤の高機能化や機能性衣料(形状記憶ワイシャツなど)の普及でクリーニング店がこれから減ることを思えば、試算以上のマーケットが見込めるかもしれません。また、先に見た「布団洗い」はそもそも家庭にも存在しなかった(諦められていた)ニーズです。コインランドリーならそれを掘り起こせるということになれば、ますますマーケットが見込めるでしょう。
発展の鍵はユーザーフレンドリー
利用者目線からは、コインランドリー検索を標榜するサイトでさえ現状は店舗網羅度が低く、結局はGoogleマップに負けている状態です。いっぽうで、一個人の溢れる情熱で都内の店舗を全制覇し、「東京のコインランドリーのデータベース」と言えるほど網羅性も情報量も充実している「こいんらんどりーでか」というサイトもあり、玉石混交です。
このあたりがもっとユーザーフレンドリーに洗練されれば、コインランドリーはもっと身近になり、もっと発展するでしょう。コインランドリーの未来に期待しましょう。
(ライター 横須賀次郎)
(2023.8.2)
(2023.8.2)