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今年の梅雨はどんな傘?
~ビニール傘復権計画~

 
 
シトシトシト・・・。心なしか最近雨が多いような。そろそろ梅雨が気になる季節ですね。
 
日本は高温多湿、多雨の国。梅雨時ともなれば傘が必携です。よく使われるのがビニール傘。皆さんも、ザーッと来たら近くのコンビニにかけこんで、300円か400円ぐらいの中国製をよく買うと思います。日本洋傘振興協会の推計によれば、国内における年間の傘の消費量は1億2000~3000万本、うち7割近くの8000万本をビニール傘が占めているんだとか。消費量と人口がほぼ同じということは、国民の7割が年に1本買う計算です。それが年々ですから、今世の中にはいったい何本のビニール傘が出回っていることやら。
 
でも、“安かろう・悪かろう”ですっかり使い捨て感覚になっているこの商品ジャンルに、とんでもない高級品があるとの情報をキャッチ! そのお値段、なんと8,640円(税込み)なり。
 
 
・・・え?
なな、なんですと!?
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ホワイトローズ(株)  東京都台東区寿2-4-8
ビニール傘でこのお値段はどういうことか。そう思って訪ねたのは、製造元のホワイトローズ株式会社さん。旧社名を「武田長五郎商店」といい、創業は享保6年(1721年)の、傘業界の老舗中の老舗というから二度びっくり。十代目長五郎にあたる須藤宰(すどうつかさ)社長を、さっそく直撃です。
 
 
―― 須藤社長! いかに言っても、ビニール傘でこのお値段はどうなんですか!?
「そう感じるのはうちの傘をいわゆるビニール傘と思っているからです。私どものつくっているのは究極の雨傘です。一般に流通している中国や台湾製のものは、世界で最初にビニール傘をつくった私どもに言わせればビニール傘ではありません。似て非なる製品です。」
 
 
―― え、でも、だってほら、ここ、この布、ビニールですよ? 
「張り布をビニールにしたのは完璧な防水性を目指した結果。ナイロンやポリエステルなど化繊の張り布は、織っている以上、必ず水が滲みて内側に抜けてきます。ですが、のし板状のビニールは、穴がない限り水が抜けてくることはありません。うちは高級雨傘を売っているんです。雨傘の理想形の一つがうちのビニール傘なんです。実際にいまも、贈答用など、ちょっと奮発して“いい傘”をお求めになるお客様からのご注文が多くて、製造が追いつかない状態ですよ。」
 
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「縁結(えんゆう)」は美智子様御用達ビニール傘
そう言って須藤社長が出してきてくれたのが・・・、
女性用傘の最高級ライン「縁結(えんゆう)」。
 
聞けばこれ、今でこそ一般販売されているものの、もともとは、美智子皇后陛下が雨の日の園遊会で使うためにオーダーされた一点物だったとか。
 
ちなみに、男性用傘の「カテール」(現在は「シンカテール」)も、もとは選挙戦に臨む政治家が街頭演説で使うためにオーダーした一点物。
 
確かにこんな傘を使ったら、勝てーる気がします。
 
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「シンカテール クラシック」は歴代首相御用達
以上写真提供:心斎橋みや竹
「うちの商品を求めるお客様は、あらかじめストーリーを持っておられます。商社の方だったら、海外の顧客が工業プラントの視察に来て雨が降ったときに、『made in Japanはさすが、傘も違う』と思わせて成約に近づける、とか、企業だったら、総会で株主へのお土産にすれば日頃の感謝を示せて、もっとファンになってもらえる、とか。美智子様も、会に来た人たちが、雨が降っても前横後ろのどこからでも美智子様を拝謁できるよう、ご自身も張り布にさえぎられずに皆さんをお迎えできるよう、とのストーリーでした。」
 
 
そういった顧客のストーリーを叶えるため、これまでも様々な工夫を投入してきたそう。
 
たとえば〈骨〉。グラスファイバー製の骨はよくしなり、強風の中でも折れにくさを実現。
〈張り布〉は、オレフィン系多層フィルムでくっつきにくく、廉価品より透明でありながら、UV99%カット。
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逆支弁。「閉じるのはレジ袋の口が開けにくいのと同じ原理」と須藤氏
さらに張り布に開けた逆支弁(特許)は、外から受けた雨や風は閉じたまま通さず、内側に風が巻き込んできたら外にめくれて風を抜けさせるから、強風にあおられにくい――。
 
確かに、皇室の方々の頭の上で傘が暴れまくるなんて、許されないですもんね。うーん、これは、8,640円でも高くないかも・・・。
 
 
「壊れても不燃ごみで捨てたくない、環境にやさしい傘がいいという近年顕著なストーリーに対しては、捨てずに長く使ってもらえるよう、部品交換と修理が可能な構造にしています。ほんの数回使えればいいつもりの中国製の廉価品とは、はなから発想が違います。」
 
 
ふ、深い。そしてなんていうか、強い
梅雨が来る前に知った、本物のビニール傘の世界。「この世には2種類のビニール傘しか存在しない。ホワイトローズ社製か、そうでないかだ」とは誰が言ったか。本物は日本の象徴を雨風UVから守ってます。B-plus私家版“とんでもないビニール傘”。ホワイトローズさんの傘を、文句なしで認定します!
 
 
 

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