4月1日、「消費税8%時代」がスタートした。初めて消費税を導入した竹下内閣(1989年)も、3%から5%に増税した橋本内閣(1997年)も、消費増税がきっかけで倒閣。消費税は時の政権にとって鬼門と言われてきた。来年10月のさらなる2%アップをひかえて、これから経済の行方はどうなるのだろう。この4月のスタート時にどんな動きがあったのか、国が言ってきたことは守られそうなのか。ここらで、消費税そのものをどうとらえたらいいのかを考えてみる。
◆消費税8%時代はスタートしたけれど
今回の増税をめぐる状況は、17年前と似ていると言われる。確かに、97年の時には阪神・淡路大震災の復興需要があり、今回も東日本大震災の復興需要が景気の後押しをしているという状況がある。
前回は、増税後の4~6月には実質成長率がマイナスとなり、その後(直接ではないが)三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券の倒産へつながった。貸し渋り、貸しはがし、リストラが増え、給料は下がり、長いデフレ時代に突入した。橋本首相は「景気の回復が十分でないときに増税したのは失敗だった」と謝罪した。
あれから17年。実質賃金は下がったままで、未だに出口の見えないデフレの海でもがいている。われわれが消費増税に「うん」と言ったのは、安倍首相が「消費増税は社会保障にしか使いません」と約束し、「賃上げ実現でデフレ脱却をめざします」と言ったからだった。それは、国民年金、厚生年金の給付金1%引き下げ、年少扶養控除の廃止、東日本大震災の復興増税(所得税率に2.1%上乗せ)、住民税均等割の1000円増(2014年6月から)など、納税者がかなり譲歩させられた状況においての増税であったことを忘れてはならない。
今回も、景気に影響は出ないという保証はない。安倍首相が言うデフレ脱却、経済再生は可能なのだろうか。
◆今回も駆け込み需要は大盛況
増税前に買ってしまおう・・・少しでも節約したいという気持ちはよくわかる。97年時も、3月に大型小売店の販売額が前年同月比14%増となるなど、大規模な駆け込み需要が発生した。ところが、4月はその反動で8%減少。その後も自動車や家電など高額商品の販売は長く低迷し、景気の下押し要因となってしまった。今回はどうか。
日本経済新聞社が行った「社長100人アンケート」によると、駆け込み需要は、「想定通り」=39.9%、「想定をやや上回っている」=10.8%と、前回同様に旺盛で、3月中は毎日のようにメディアに取り上げられた。上旬に住宅、自動車、家電など高額商品の需要が増え、中旬以降は夏物の洋服や日用商品に移っていった。壊れていなくても長く使うものは買い換え、調味料、洗剤などの日用品や、日持ちのする食料も買い貯めし、後はしばらく節約する・・・。
価格がこなれたコモディティ商品であれば、確かにそういった駆け込み購入の意味はあるだろう。しかし他のものは、景気低迷などで値下りしてしまったらどうするのだろう。実際に、2011年3月の家電エコポイント導入の時、駆け込み後に値下がりして消費税分も割り込んでしまうケースが見られた。今回、そういうシーンがないとは言えない。給料が上がるかどうか不確かなのに、なけなしの預金を切り崩して、まだ壊れてもいない洗濯機の横に新品を並べてにんまり・・・これっておかしくないだろうか。駆け込み景気は、未来の需要を前倒ししているだけに過ぎない。そのことを忘れてはならないだろう。