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コロナ禍で考える、理想的な組織づくり vol.4 働きやすい職場づくりが自社の成長につながる

ビジネス コロナ禍で考える、理想的な組織づくり vol.4 働きやすい職場づくりが自社の成長につながる コロナ禍で考える、理想的な組織づくり e-Janネットワークス株式会社 代表取締役 坂本史郎

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新型コロナ感染拡大の影響などで、2020年以降、多くの企業がテレワークを導入してきた。それに伴い、社員間のコミュニケーション不足などの課題も明らかになってきている。テレワークプラットフォームのCACHATTO(カチャット)および関連製品の企画・開発・販売・運営を手がけるe-Janネットワークス株式会社では、コロナ禍以前からテレワークの導入を推進するなど、社員が働きやすい環境づくりに尽力してきた。テレワークを円滑に継続するための対応策や、理想的な組織づくりに必要なことを同社の坂本史郎社長にうかがう、最終回。
 
 

どこでも働ける環境づくりで地方の人材を採用

 
――御社では、社員が全国どこでも働ける環境づくりも進めていますよね。
 
函館サテライトオフィス
函館サテライトオフィス
ええ。私は東京に人口が一極集中している状況は異常だと考えています。みんなが通勤で都心に出てくるから電車も満員になる。私は満員電車が大嫌いだったので、出社の時間をずらして始発で出社するなどの工夫もしていました。
 
一極集中という意味では、人材も同じです。本当は田舎で暮らしながら働きたい優秀な人もいるはずなのに、入社したい企業が東京にしかない。そういう人たちにとっては、今の状況は不利ですよね。
 
それって非常にもったいないことだと思います。そこで当社では、会社に人材を集めるのではなく、会社のほうが地方の人材に近づいていくという考えで事業を展開しています。そうすれば、地方に留まりたい優秀な人材を採用できる。例えば高知県のオフィスでは現在26名が働いていまして、センター長以外は全員現地採用です。こういう取り組みは地方創生への貢献にもなりますし、社内の雰囲気もいいです。
 
また、年に3回、1回につき20日まで、合計60日をワーケーションの期間として活用できる制度も実施してきました。営業日で計算すると、3ヶ月は好きな場所で仕事ができることになりますね。
 
それに加えてこの10月からは、オフィスに通勤してそこを拠点に働くという従来の概念とは異なり、どこへでも移住可能で、その移住先から勤務していいという新制度もスタートしました。これまでは、例えば沖縄県で働きたいと思う社員がいたとしたら、ワーケーション制度を使えばある程度は実現できました。ただ、その人が沖縄に移住したいと思った場合は、ワーケーションではカバーできなかったんです。
 
そこで、そういう社員が実際に沖縄に移住してからも当社で働いてもらえるような制度をつくりました。その社員が何かの際にオフィスに出てくる必要が出た時には、出張扱いになります。だから極端な話、どこかの離島に住んでいても弊社で働くことができるんです。
 
 

削減されたコストを新しい試みに使う

 
――テレワークで全社員が問題なく仕事を継続できる状態が維持できれば、もはやオフィスが必要なくなりそうですね。
 
そうですね。当社の東京オフィスはテレワークの推進によって、ガラガラになっていますので、2022年度に入ったら縮小することに決めました。これにより削減できるコストは相当なもので、そこで浮いた費用はまた別の取り組みに活用できるはずです。

東京に人材を集中すると、交通費などコストが膨大なものになりますよね。では、削減できた費用を原資に何をするのか。費用の使いどころを変えることも事業を続けるうえで、重要な発想になると思います。今まで割いていたコストがなくなったので利益が増えた――ではなく、その費用を別の制度のために使う。社員が働きやすくなる環境をつくるために、気前よくお金を使っていく。そうすることで、試みた制度は定着するものだというのが私の考えです。
 
 

対面で得られる空気感をITでつくれるかが課題

 
――会社の都合で社員の住む場所が決まるという考え方ではなく、好きな場所で働けるとなると、御社で働きたくなる人材は多いと思います。
 
誰もが好きな場所で働けることこそが、あるべき姿だと思います。IT技術を有効活用すれば十分実現可能ですから、これからはそういう時代になっていくのではないでしょうか。ただ、それが広がっていくためにはもう少し工夫が必要だと思います。
 
やはり、この取材のように対面でお話をするのと画面を隔てて行うものには、ちょっとした差があると思うんですよ。ですから、こうした対面でこそ得られる空気感をITでつくれないか。そこが課題だと思います。
 
これを実現するために、高知や函館のオフィスを活用し、地域の教育機関や研究室とタイアップして産学連携でトライをしているところです。それは、ITを使いながらも、対面と同じようなリアリティのある空間をつくり、それを共有できる仕組みができないかを実験するという試みです。
 
具体的に函館では10月から、「ミライノオフィスはどこでもオフィス」をコンセプトにしたプロジェクトがスタートしました。公立はこだて未来大学と連携して、最先端のテクノロジーを活用し、より良い労働環境やワークスタイルを実現するツールの開発や研究を推進していくものです。
 
 

働きやすい職場づくりは利益確保につながる

 
――テレワークやワーケーションなどで仕事のスタイルが変わっても、組織が有機的に動くための仕組みづくりがまだまだ続くわけですね。
 
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それが当社の使命だと思っています。社員が働きやすい環境をつくっていく取り組みは、トータルとして見ると、会社の事業としてプラスになることは間違いないですからね。前例のないことを試みて、失敗をしたら誰が責任を取るんだという問題はあると思います。でも、そこを乗り越えていく必要がある。
 
お話しした通り、当社も最初は失敗の連続でした。ただ、トライ&エラーを繰り返してきた結果、現在は働きやすい環境づくりが整備されてきたという実感はあります。まだまだやることは多いものの、会社はいい方向に向かっている。その証拠に、当社は2006年以来、ずっと黒字が続いていますからね。
 
こうやって利益が出続けているのは、“理想的な組織から健全なビジネスが生まれる”という仮説が正しいと信じて、自信を持って事業を推進してきたから。今後もこれを継続していくことが大事だと思います。そうすれば、ステークホルダーの方々みんなに「いいじゃん」と思ってもらえるようになるはず。そこを目指してこれからも頑張りたいです。
 
~了~
 
コロナ禍で考える、理想的な組織づくり
vol.4 働きやすい職場づくりが自社の成長につながる
 
(取材:2021年10月)

 プロフィール  

坂本 史郎 Sakamoto shiro

e-Janネットワークス株式会社 代表取締役

 経 歴  

1962年東京都生まれ。早稲田大学理工学部機械工学科を卒業後、東レ(株)に入社。1995年にバージニア大学ダーデン校でMBAを取得した。2000年に独立して(株)いい・ジャンネットを設立。2001年にe₋Janネットワークス(株)に社名変更。2011年、「日本創生ビレッジビジネスコンテストEGG JAPAN Innovation Cruiser」 で同社の提供するCACHATTOが「Global賞」を受賞した。2019年にスムーズビズ推進賞受賞・テレワーク先駆者百選に選定される。創業以来、社員が働きやすい労働環境の整備に尽力し続け、2006年以降、黒字を続ける経営を続けている。

 e-Janネットワークス株式会社公式サイト 

https://www.e-jan.co.jp/

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