テレワークで見逃されがちな、やるべきこと
一方で、見逃されがちなこともあって、それは社内発表会、社員同士が「気にしているよ」と感じ合えるためのケア、ブレスト、声かけや雑談、課外活動です。ここを会社としてカバーすることが重要だというのが、私の考えです。
――具体的にどのようなケアをしているんですか。
例えばオンラインでの発表会や表彰式の場などでは、お弁当などをデリバリーで社員の自宅に届けて、みんなで同じ時間に同じものを食べながら会を進行する取り組みもしています。これは、みんなが同じものを一緒に食べるというところが意外と重要で、お弁当の感想を言い合うなどして盛り上がれるんですね。このように、ひとつの場所に集合しなくても、宴会のような行事はできるんです。自宅で参加できるから移動の必要もないので、参加率も高いですよ。
さらに、今年の10月から函館にあるサテライトオフィスを自由に使用できるようにしました。そこに2日以上滞在して仕事をしたら、往復の交通費を5万円まで支給しています。さらに、宿泊費も1日あたり5000円出しているので、仮に2日間そこで仕事をした場合は6万円を会社が補助することになる。気が向いた時に函館オフィスに集まった社員たちが、密にならないように注意しながら現地での仕事を楽しんでもらえれば、これも雑談的な効果が期待できます。
――そうした取り組みは、御社がコロナ禍前からコミュニケーションを深めるための取り組みなど、働きやすい職場環境の整備をしていたからこそ可能になったものというように感じます。
そうですね。コロナ禍前から、当社ではいろいろな制度を試みていました。例えば、懇親会制度というのがあります。こちらは、月に1回社員たちがグループで外食した際に1人につき5000円を会社が補助するというものです。
あるいは農家と連携して、有機無農薬野菜を週に1回会社に送ってもらって、それを半額で購入できるイベントも開催していました。それと併せて、その農家さんにお邪魔して土いじりを体験する機会を提供したこともあります。
連帯感を高める場を会社が積極的に用意する
そうですね。職場の連帯感を高めるとよく言います。でも、それって放っておいて自然に高まるものではないと思います。それよりも、会社が積極的にエンカレッジ(=後押しし推進)したほうがいい。例えば課外活動として社員同士が遊びに行くとしたら、それに対して補助を出すとか。
そうした取り組みは社員から十分に活用されるわけではありません。それでも、自然に組織力が高まるようなことはないので、何らかのアクションが必要です。ですから当社ではいろいろな試みをしてみる。これもマイクロマネジメントに近い働きかけと言えると思います。
みんなが仲良く、楽しみながら刺激し合って成長できるような雰囲気を醸成できると、高品質のサービスを会社として提供できるようになると思います。しかもこのサービスは、社員みんなでつくりあげたものなので、「自分は適当な仕事をしててもいいや」というようなマインドセットになりません。一人が適当な仕事をしてしまうと、全体の動きが崩れてしまう可能性もある。ですから、適当な仕事はできない。そういう目に見えない部分で通底する社風のようなものを組織の中に醸成していくことが、大事だと思います。
vol.3 テレワークの環境下でいかに組織の連帯感を高めるか
(取材:2021年10月)
プロフィール
坂本 史郎 Sakamoto shiro
e-Janネットワークス株式会社 代表取締役
経 歴
1962年東京都生まれ。早稲田大学理工学部機械工学科を卒業後、東レ(株)に入社。1995年にバージニア大学ダーデン校でMBAを取得した。2000年に独立して(株)いい・ジャンネットを設立。2001年にe₋Janネットワークス(株)に社名変更。2011年、「日本創生ビレッジビジネスコンテストEGG JAPAN Innovation Cruiser」 で同社の提供するCACHATTOが「Global賞」を受賞した。2019年にスムーズビズ推進賞受賞・テレワーク先駆者百選に選定される。創業以来、社員が働きやすい労働環境の整備に尽力し続け、2006年以降、黒字を続ける経営を続けている。
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