プロフィール 1950年、福岡県に生まれる。福岡医科歯科技術専門学校を卒業後、1978年にDCLトミタ開設。1998年、グループ・ウルティマ研修グループを設立・主宰し、2000年、(有)臨床歯科技術研究所講師に就任(2001年に役員に就任)。2008年、健康創造歯科研究会を設立。現在は講師として東北から沖縄まで各地を飛び回る毎日を送る。
高齢者人口が増え、義歯(入れ歯)の需要が高まっている。それにつれ、義歯が品質の観点から評価されるようになってきた。 「入れ歯でも思い切り噛んで食事をしたい!」「合わない入れ歯は使いたくない!」――歯科技工士である冨田英二氏によって設立された健康創造歯科研究会では、“自分の歯ではないから”という諦めの声に埋もれていたそれらの患者の正当な欲求を掬いあげ、独自の咬合理論「Lower Buccalized Occlusion(ロワー・バッカライズド・オクルージョン)」を確立。各地の歯科医の賛同を得てその普及にあたっている。患者にも歯科医院にもメリットをもたらすLBO。その内容を聞いた。
インタビュアー 俳優 大門正明
新しい発想の咬合理論――LBO
大門 柿内先生が実践されている歯科医学領域の技術、LBOについて聞かせてください。
柿内 LBOは正式名称をLower Buccalized Occlusion(ロワー・バッカライズド・オクルージョン)といいまして、「下顎の頬側咬頭を上顎の中心裂溝に咬合させる」ことを重視する新しいタイプの咬合理論です。少し表現が専門的すぎますね(笑)。つまり、今お使いの義歯が自分に合わなかったり、食事の際に浮き上がって痛いといった悩みを、噛み合わせを調整することで劇的に改善できる技術です。 私がLBOを知ったのは今から6年前。当時、私は東京駅丸の内北口からすぐの場所に歯科医院を開業し7年目になっていました。一般歯科以外に審美歯科や矯正歯科も手掛ける中で義歯に関する悩みをたくさん聞き、「ブリッジやインプラントの他にも良い選択肢はないか」と探していて、LBO理論を提唱している健康創造歯科研究会のセミナーに参加したのです。
大門 では健康創造歯科研究会の代表講師である冨田歯科技工士から、LBOについて詳しいご紹介を。そもそもはどんな経緯で生まれてきた技術なのですか。
冨田 歯科医院の診療現場で患者さんの義歯を調整するうちに、噛み合わせ以外の悩みまで解消されるケースが多かったのです。「ひどい頭痛に悩まされていたが、なくなった」「いろんな治療法を試しても何年も良くならなかった腰痛が治った」「動悸や目まい、肩こりがなくなった」といったケースですね。最後には、患者の歯型を見ただけで不定愁訴を診断できるようにまでなりました。それで私は、「咬合は全身の健康と直結しているに違いない」と確信したのです。
もちろん、噛み合わせと健康の関連性は従来から言われてきたことではありました。「正しい噛み合わせで健康になろう」といった類のキャッチコピーも昔からありました。しかし、「“正しい噛み合わせ”とはどんな噛み合わせか?」となると、明確に答えた理論はなかった。私は、歯科技工士として20年以上症例研究を続けた結果、「上の歯を下の歯のこの部分に当てるのが正しい」というレベルまで具体的に示せるようになりました。それを元に編み出した技術がLBOです。