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「あなたの会社にBCPはありますか?」

 
 最近、企業が新しくビジネスを始める際に、相手側からこう尋ねられるケースが増えているという。自然災害や事故など不測の事態が発生した場合に、事業を早期に復旧させるのがBCP(事業継続計画) である。その範囲は自社にとどまらず、自社が必要とするものを供給している関連企業にまで及んでいる。大手企業のサプライチェーンの一員である場合、BCPを策定していないことがグループ全体に重大な影響を与えてしまう可能性がある。「BCPを軽視していると、サプライチェーンからはじき出されかねませんよ」 相手側はそう注意してくれているのだ。
 今回は、2月号でも取り上げたリケンと富士通の事例を基に、特にサプライチェーンにおけるBCPについて課題、問題点を掘り下げてみたい(本文中にあるBCMとは、BCPを策定して実現可能に保つための活動としての「事業継続マネジメント」という意味)。
 
 

震災で明らかになった
SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)の弱点

 
 サプライチェーンのBCPといわれて思い出すのは、新潟県中越沖地震での自動車部品メーカー・リケンのケースである。詳細は2月号で述べているので、遡っていただくとして、サプライチェーンとBCPとの関係を理解しておく意味で、簡単に経緯を紹介しておきたい。
 2007年7月の新潟県中越沖地震の際、クルマのエンジン部品であるピストンリングのトップメーカー・リケンの柏崎工場が被災したため、トヨタ、ホンダなど国内の主要自動車メーカーが軒並み操業中止の憂き目にあった。
 サプライチェーンは、ここ数十年間、パートナー企業同士が強い関係を作り上げることで生産体制や品質を向上させてきた。自動車メーカーのように傘下に多数の提携会社や子会社 (部品メーカー) を抱える企業は、災害で事業が継続できなくなった場合を想定して二重、三重の対策をとっている。世界のトヨタも「カンバン方式」を徹底させるため、ピストンリングの発注先をリケン一社にしぼってきた。高度のSCMを構築するためには、当然の取り組みだったといえる。しかし、運悪くそのリケンが震災で被災。その結果、トヨタ、ホンダなどリケンに頼っていた各メーカーが工場封鎖に追い込まれ、製造中止になったクルマが数万台にのぼったのだ。
 リケンはこの苦い経験を基に、設備や建物の耐震化を進め、自動車のサプライチェーンを2度と止めないため、強い工場作りに取り組んでいる。例えば、(1)生産工程や在庫管理手法の刷新、(2)BCPの改善、(3)ITインフラの強化である。具体的には、
 
  1. 耐震補強、防災対策を引き続き行う
  2. 機械装置の転倒防止に重点を置く
  3. 棚からの落下防止のため、防止ガードをすべての棚に取り付けた
  4. 緊急地震速報や、携帯メールによる従業員の安否確認システムをも導入
  5. リードタイムの短い工程ほど復旧が早かったことから、改めて工程改革に取り組んだ
  6. 協力会社にも防災・耐震対策を導入してもらうように働きかけた
  7. メーカーへの安定供給を実施するため、関東と中京地区にも在庫を持つことにした
 
である。
 
 
 
 

企業が取り組むべきBCP(事業継続計画)とは 古俣愼吾

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