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第11回 日本人の勤勉さが活かせる業種は何?

 
 
 
 千差万別―― この言葉が示すように、人間が集まれば集まったぶんだけ、性格などの個性は様々なバリエーションが見られるようになります。血液型で大まかな性格分類をする方法があるように、国民性によっても、向いているビジネスや不向きのビジネスが存在すると私は考えています。日本人に適している業務は何か? それを考えてみる前に、オーストラリア人の国民性から説明してみます。
 
 

様々な「オーストラリア人」――その国民性

 
 オーストラリア人と一口に言っても、オーストラリアは移民国家であり、多民族国家です。それぞれの出身国、ルーツによって、「この国出身の人間はこんな性格」 と、大まかではありますが分類することが可能です。
 
 あくまでも私が接し、経験してきたことからの見方になりますが、南アメリカのラテン系の国々の出身者は  (スペイン、イタリアなどもここに含まれます) とにかく陽気。悪く言えば、彼らの考えはその場面、場面で行き当たりばったり。「先のことなど明日考えれば良いさ~」 と、“超” が付く気楽な考え方です。たとえばスペインはこの世界恐慌の風が吹く中で影響をモロに受けデフォルト状態で、失業率20%という地域もありますが、それにも関わらず毎日飲んで騒いでいます。知人のスペイン人に大丈夫なのかと尋ねたところ、知人は 「飲んで騒いで毎日楽しく過ごしているから、この程度で済んでいるんだ。毎日くよくよしても、仕方がないしね」 とウィンクしながら答えてくれました。これがラテンの気質かと、妙に感心してしまいました。
 続いてヨーロッパ出身者。私たち日本人からすれば、イギリス人も、フランス人も、平たく言えばヨーロッパの人たちはみんな同じだと思いがちです (もっとも先方も、日本も中国もアジア人は皆一緒と考えています)。しかし、同じヨーロッパ圏でも国民性は各国によって異なります。イギリス系は懐に入るまでに時間がかかりますが、一度入ってしまえば親密な関係を築けます。フランス系は良い意味でも悪い意味でも個性的。プライドが高く、口が達者です。ドイツ系はやはり日本人と相通じるところが多く、几帳面で、他のヨーロッパ諸国からすれば異質な印象を受けているようです。ただ一つ共通していることは、彼らは自分たちに有利になるルールを決めるのが得意。そんな印象を受けます。
 次に北米地域、つまりアメリカの流れをくむ人たちは、自分たちが世界の中心だと考えているので、他の国への配慮や、相手のことを理解する能力に欠けています。共同作業では常に主導権を取りたがり、リーダーになりたがります。また 「私の意見が正しい」 と、意見を押し通す傾向にあります。
 近年はアジアの国々からもオーストラリアへの移民の割合が急増しています。その中でも、インド系は絶対に自分の非を認めず、国際社会の中でも当たり負けないタフさを備えています。ベトナム系は、比較的スマートな人間が多く、総じて教養が高いように思われます。交渉も上手で、ビジネスの観点から見れば手強さを感じます。シンガーポール人は小国であれだけの発展をしているだけあって、スキがなく、万事そつがない印象を受けます。中国は・・・ ひとくくりにするのは難しいですが、あえて北京人と上海人という分類をすれば、北京人は少々野暮ったく、上海人はアクの強い商売人といったところでしょうか。
 
 オーストラリアの人口は2000万人程度。東京都と同じくらいですが、ひとくくりにオーストラリア人と言っても、これだけ多くの個性 (国民性) が混ざり合い、ぶつかり合って成り立っているのです。
 では日本人は海外からどのように見られ、評価されているのでしょうか。
 
 
 

オーストラリアから見た日本人

 
 これだけ豊かな個性の中に入ると、日本人は目立たず、大人しい印象を受けているのは事実です。もちろん抜群のリーダーシップを発揮し、ビジネスを切り盛りしている人もいますが、大半は、多かれ少なかれ対立を避ける温和なイメージを持たれています。ぐいぐい意見を通し、リーダーシップを発揮し、あの手この手のルールの裏を突くような交渉術や、ルールギリギリの商法は、国民性から考えると、向いていないのかもしれません。
 しかし、何もないところから何かを生み出すクリエイティブな能力は劣るかもしれませんが、物事がしっかりと決まり、方向性が定まっている場合の運営能力は、他国民を圧倒する力があります。勤勉、信頼性、物事を解決する能力、成功しても常に改良し続ける姿勢。これらが、オーストラリアで日本人が評価されている部分です。
 金融工学を駆使し、投資や金融、証券などの分野で活躍している日本人も多くいますが、これらはもともと欧米人が考案した分野で、彼らの得意分野です。彼らは自分に有利になるようにルールを設置・変更するのに長けていますので、私は、日本人があえて彼らの得意分野で勝負する必要性は低いと考えています。せっかくこちらが軌道に乗り出しても、その段階でルールを改正され、振出しに戻され、今までの苦労が水の泡・・・ などという可能性も、無きにしも非ずだからです。
 では、日本人の長所が活かせ、かつ大幅なルール改正などの嫌がらせを受けない分野は何か? ずばり物流・運輸の業界が、可能性が高いと考えています。
 

 

オーストラリアの物流・運輸業界の現状

 
 なぜこの分野は我々日本人にとってビジネスチャンスが大なのか。まずはオーストラリアの物流・運輸業界の環境、状況はどうなっているかを見てみましょう。
 
 これは物流・運輸業界に限ったことではありませんが、オーストラリアのガテン系の人件費の高さは驚くばかりです。この国は労働組合が非常に力を持っており、アワードと呼ばれる労働基準法にも基づいて給与が支払われているので、合法ではあるのですが、正直 「う~ん」 と唸ってしまう賃金になっていることもしばしばあります。労働時間が8時間を超えると時給が1.5倍。10時間を超えると2倍になります。このあたりまでは常識の範囲ですが、夜勤になるとやはり時給が2倍になり、パブリックホリデーと呼ばれる祝日になると、時給が3倍にも跳ね上がります!!
 なぜここまで時給を上げるのか。単純です。仕事をする人がいないからです。休日に稼動してくれる人が集まらない。集まらないから高い時給を提示せざるを得ない。たとえば、コンテナから荷物の上げ下ろしをする単純作業でどのくらいの賃金が発生すると思いますか? 細かな状況によって変わりますが、だいたい平日の昼間で時給25~30ドル(日本円で2400円前後) になります。これに残業をすればそのぶんの割増賃金。また土日祝日勤務となれば、2倍、3倍の割増賃金を支払う必要があります。
 労働者がそれに見合うパフォーマンスを発揮してくれれば、これだけの賃金を払う必然性もありますが、大半はやる気なさそうに、ちんたら荷物の上げ下ろしをして、時間を必要以上に伸ばしている労働者ばかりです。私が実際に調査と称してその現場に立ち会ったところ、もし日本で同じボリュームの仕事をすれば、オーストラリアで12時間かかるところを、おそらく10時間未満で切り上げられると思いました。また、現場を取り仕切る現場監督がその場にいないことも多々あり、彼らが何をしているのかなと見渡すと、端のほうでお茶を飲んだり、煙草をふかしたり、談笑していたりして、本来の業務を遂行していないことも判明しました。
 
 これだけずさんな管理体制ですが、オーストラリアの物流・運輸業界は国内の企業がほとんどのシェアを独占しているので無風状態です。強力なライバルは不在で、外圧も少ないのでユーザーへの料金を高く設定でき、問題点の改善・改良、経営体制の引き締めなどを行わなくても、十分な利益を確保しています。このあたり、サービスの在り方をユーザー目線から考えるのに慣れた日本人は 「いかがなものか」 と感じるでしょう。
 
 逆に言えば、「時間厳守。期日を守る。注意力を持つ。効率が悪い点は改良する」 などなど、日本でごくごく一般的に行われていることをやれば、それだけでオーストラリアでは、他社とは違う付加価値としての評価を得ることができます。
 
 
 
 次回も今少し、物流・運輸業界の現状について書いていきます。 
 
 
 
  南半球でビジネスを考える ~オーストラリア在住・日本人経営コンサルタント奮闘記~
第11回 日本人の勤勉さが活かせる業種は何?

 執筆者プロフィール  

永井政光 Masamitsu Nagai

NM AUSTRALIA PTY TLD代表 / 経営コンサルタント

 経 歴 

高校卒業と同時に渡米、その後オランダに滞在し、現在はオーストラリア在住。永住権を取得し、2002年にNM AUSTRALIA PTY TLDとして独立。海外進出企業への支援、経営及び人材コンサルティングを中心に活動中。定期的に日本にも訪れ、各地で中小企業向けの海外進出セミナーなどを行っている。

 オフィシャルホームページ  

http://www.nmaust.com/

 ブログ  

http://ameblo.jp/nm-australia/

 
 
 
 
 

 

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