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東京にある無人販売所

 
無人の店舗といえば、畑が広がる地方で見かける“無人野菜販売所”を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。地元の人々の多くが顔見知りで、お互いを信頼できる環境だからこそ成立している無人販売所。しかし、多くの人で溢れている東京にも“無人販売所”がありました。JR三鷹駅からおよそ徒歩10分。地元の人々が行きかう三谷商店街の中にあるのが、無人古本屋「BOOK ROAD」です。一体、なぜ東京で無人古本屋を? どのように運営しているのか? 疑問を解決するべく、オーナーの中西功さんのもとをたずねることにしました。
 
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わざと2畳ほどの狭さにレイアウトされた店内
「BOOK ROAD」に着くと、出入り口がガラス張りで店内がよく見えることがわかります。その入口で、スーツ姿の中西さんが笑顔で迎えてくれました。中西さんは、普段は会社員として働きながら、週に1~2度店舗に寄るのだそうです。「自宅にある1000冊を超える本の処分を迫られ、会社に勤めながら販売できる方法を考えたら、無人古本屋に行き着いた」とのこと。既存の古本屋に持ち込むことや、インターネットで販売することは考えなかったのか聞くと、「全く考えなかった」と答える中西さん。「もともと本屋さんが好きで、いつか自分で店舗を持ちたいと考えていた」と語ってくれました。
 
無人店舗にするにあたっては、もともと7坪だった室内を、わざと2坪分しか使わないなどの工夫が施されています。店内の様子が外から一目でわかるようにし、“盗みたい気持ち”が生まれないようにしているのだとか。そういった“予防”が功を奏したのか、2013年に店舗を開いてから4年間、トラブルは一度もないそうです。中西さんによると「盗もうと思ったらいくらでも盗める環境。店として成り立っているのはお客さんの良心があってこそ」とのこと。
 
 

地域に親しまれる店に

 
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支払いシステムもユニーク!
また、支払いのシステムにもいっぷう変わった工夫があります。店内には2台のガチャガチャが設置されており、それぞれ300円と500円で回すことが可能。本の裏表紙には300円、500円、800円、1000円の印がついているので、それに対応するガチャガチャを回すと、ビニール袋が入ったガチャ玉が出てきます。ガチャガチャを回すことで支払いを済ませ、さらにガチャ玉に入っている袋に本を入れて帰るという無駄のないシステムになっているのです。店舗を開く前は賽銭箱を使った支払いシステムを考えていたものの、無人店舗に賽銭箱だと怖がって人が近寄らないのではと考え直したそうです。
 
地元の子どもたちには「ガチャ本屋」と呼ばれ親しまれている「BOOK ROAD」。地域の人々の生活の一部になるような場所に店舗を構えたと中西さんは話します。「見に来るだけでも良いのでぜひ立ち寄ってほしい」「地域の止まり木のような存在になれれば嬉しい」と語ってくれました。今後は本屋のない小さな島に、「BOOK ROAD」の本を提供していきたいと考えているそうです。
 
東京という都心において、地域住民との信頼で成り立っている、無人古本屋「BOOK ROAD」。三鷹駅をおとずれた際には、一度立ち寄ってみるもの良いのではないでしょうか。

 
取材協力
BOOK ROAD
ツイッター https://twitter.com/bookroad_mujin
 
 
(2017.6.28)
 
 
 
 

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