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今年末は一味違う? 保険見直し
~マイナンバー、改正保険業法との関連から~

 

◆2015年末現在、保険業界は変わり始めている

 
 保険のからみでは、2016年5月には改正保険業法が施行される運びとなっているのはご存じだろうか。一般の消費者はまだ改正の影響を感じないだろうが、業界は対応準備に追われている真っ最中だ。施行後は全ての保険代理店は保険募集人を社員化することが義務付けられ、保険募集人を社会保険に加入させなければならない保険会社にとっては、代理店運営コストが高くなる。
 
 そのいっぽうで、保険募集ルールの改正も行われる。生命保険の販売を行うセールスマン・セールスレディが「保険の見直し」を勧める理由として、大きく分けると次のような理由が考えられる。
 
・本当に顧客のためを思い、ライフステージに応じた保障内容を提供するため
・より高額な販売報酬が得られる保険商品を購入してもらい、自分の営業成績を上げるため
(セールスマン本位、保険会社本位の販売)
 
 しかし、改正保険業法により、保険商品を提案してから顧客の同意を得て契約に至るプロセスまでも詳細に記録し、後で確認できるようにしなければならないと定められるため、手数料目当ての販売に関しては一気にハードルが上がる。なお、もともと顧客本位の販売を行っているなら、詳細を確認・記録することになっても不都合はないはずなので、今回の改正は一部の保険販売代理店にとって、本来あるべき姿に立ち返って続けるか、事業を畳むかの「踏み絵」を迫られる変化なのだ 。
 
 

◆片手間の保険販売を続けるか否か

 
 もう一つ、改正保険業法、そしてマイナンバー制度の影響を大きく受けて大変な業界がある。それは税理士事務所や会計事務所、自動車ディーラーなど「本業のついでに保険の販売を行ってきた」という事業者だ。
 
 特に、税理士・会計士などの人々は、マイナンバー制度の影響も受けており 、極めて多忙な状況だろう。例えば、特定個人情報保護委員会の「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」において求められる物理的安全措置の実施は会計事務所にも求められる。中小企業の代理人として個人番号が記載された申告書や申請・届出書、法定調書などを税務署に書面で提出する場合の対応なども確認しておかなければならない 。
 
 税理士や会計士は、保険サービス消費者の中でも特に経営者について、その家族構成や事業の状況などを詳しく知っていることから、適切な保険商品を、必要なタイミングで勧めやすいというメリットがある。相続・事業承継などのコンサルティングを得意分野としている会計事務所になればなるほど、FP的な業務が増え、これまでは保険商品を販売するチャンスも多かったものと思われる。
 
 しかし、改正保険業法の施行によって保険代理店として維持していけるのか、さらには顧客の意向把握・情報提供などにかける手間暇がさらに増えることになる中で、それでも保険商品の販売を続けるのか、彼らも「踏み絵」=決断を迫られる時期が来ている。
 
 

◆保険加入者が求められること、得られるもの

 
 年末に際し保険の見直し・新規加入を行うにあたり、消費者は「職業、家族構成、年収」などの情報提示を積極的に行わなければ、保険募集人が正しい商品を提供しづらくなる。また、これまでセールスマン・セールスレディに「お任せする」という意識でいた人は、今後より詳しく契約内容を説明されたり、理解しているかどうかを確認されたりし、「手間暇が増えた」と考えてしまう出来事も起こるだろう。
 
 しかも、「理解していないにもかかわらず契約をしてしまった」という言い訳は、通りづらくなる。なぜならば保険募集人はこれまで以上に、わかりやすく説明できる図表、法的に問題ない書類等を用意し「確認した」「理解した」などの署名、捺印等を厳密に求めてくることが予想されるからだ。
 

 また、ショッピングセンター等に乗り合い代理店が店舗を構え、「買い物ついでに相談を」と呼びかけが行われていたが、今回の改正はこれらの乗り合い代理店にとって特に厳しいものであり、油断していると「保険の相談をしようにも店舗がなくなっていた」「後継の担当者が誰かもわからない」という事態になりかねない。なので、今後は保険会社からの郵便物・電話等は必ず確認をしていく必要がある。総じて加入者も、今回の改正で、消費者として本来持っているべきだった「我がこと意識」の再確認を迫られるようになっていく。「踏み絵」を迫られるのは業者だけと思うのは間違いということだ 。

 
 保険会社側は、マイナンバーや改正保険業法に対応するため、システム面でもコストをかけ、社員教育も行っている最中だ。だからこそ、保険契約を取るのに必死の姿勢になっている。消費者にとっては、当事者としての意識とそれに伴う労力を覚悟すれば、保険募集人にこれまで以上の誠実さを求めつつ最適な保険を選び直せるチャンスだ。今年末は「なんとなく」加入していた保険を見直すための絶好のタイミングと言えるだろう。
 
 
(ライター 河野陽炎)
 
 
 
 

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