GWとボランティア
~企業に支援のメリットはあるか~
◆日本企業の取り組みは?
市民と半官半民の社協が積極推進する中、日本の企業のボランティア活動に対する関与は総じてまだ消極的だ。社員が行うボランティア活動に対しても「実益につながる」という裏打ちがなければ、有給休暇取得の承諾や資金援助を行わない企業が大半を占める。
そのいっぽうで「ボランティア休暇制度」を設けている企業も一定数存在する。同制度は特別休暇としてボランティアを目的とする休暇の取得を認めるもの。導入する企業は全体の2.8%にとどまるが、従業員1,000人以上の大企業に限れば23.0%が導入している(うち賃金全額支給62.7%、一部支給3.8%、無給33.5%)。
この制度を日本で最初に導入したのは富士ゼロックス社だと言われる。同社では月間5日まで短期のボランティア休暇を申請・取得できるうえ、最長2年にわたり賃金と賞与相当額の援助金が支給される「ボランティア休職制度」を実施している。また社内には社員が主催するボランティア組織「端数倶楽部」があり、同社ではこの組織に対して寄付活動の応援や社内インフラの利用を認めるなどの支援を提供。さらには会社の業務としてボランティア組織の集金・管理など事務局業務を請け負う。
他にも住友商事では1998年に同様の制度を設けて以来、2013年までの16年間でのべ164人がボランティア休暇制度を活用したと報告している。制度はあるものの利用者がほとんどいない、という企業が多い中、実を伴う企業のアピールは貴重だ。
◆ボランティア支援は株主に説明できる
海外の大企業や先見性の高い国内企業に続いて、東日本大震災以来、社員のボランティア活動をCSR(corporate social responsibility=企業の社会的責任)の一環ととらえて支援する企業が一部で増加している。
実は、社員がボランティア活動をすることには雇う側の企業にとっても実質的なメリットがある。活動を通じて実務能力の向上や積極性の育成が期待できる他、社内外のネットワーク構築、社会経験を積むことによる視野の広がりなど、人材育成面での効果は非常に高い。
またボランティア活動に熱心な人には、ビジネスにおいても積極的で能力の高い人が多い。ボランティア支援に力を入れる企業はそういった優良な人材を集めやすく、ひいては安定的な成長路線につながる。企業活動が国際化する中、海外企業からの目線が違ってくるというメリットも無視できない。
このようにメリットの大きいボランティア支援だが、現状では先にも触れた通り積極的な企業はまだまだ少数派にとどまる。箱物をつくったり、福祉事業に資金を出したりといった活動は報道される機会もあり企業イメージのアピールにつながるが、ボランティア支援はメリットが小さく見えるためだ。利益につながらない活動は株主に説明できない、というのが本音だろうか。
労働適齢人口が減っていく中、人材を巡る取り合いが激化している。今後は、「よい人材を確保し育てるため」という戦略上の目的にフォーカスした社員のボランティア活動への積極支援は、株主総会でも納得を得られるようになるに違いない。(むしろ株主が気付く前に経営側が気付いて示すべきだ。)まずは今年のGWをどう過ごしたのか社員に聞き取りを行い、ボランティアへの意識を確かめることから始めるのがおすすめだ。
(ライター 谷垣吉彦)