再来!ビットコイン
~マイクロペイメントがビジネスを広げる~
◆薄利ビジネスにもグローバルビジネスにもメリット
楽天が導入に踏み切った背景の一つには、電子マネーの割高な手数料の問題があるようだ。楽天EdyやSuica、nanacoといった電子マネーは、参入する店にとっては月額基本料の他に取り引きの都度2~4%の利用手数料がかかり、大きな負担になっている。ビットコインなら手数料はゼロか1%くらい。つまり、利益率2、3%の超薄利多売ビジネスでも成立するようになるのだ。
ビットコインの普及は、他にもあらゆる分野に影響をもたらしそうだ。例えば、ビジネスフロンティアとしての地位が高まりつつあるアフリカ地域への進出を目指す企業にとっても役立つ。途上国との送金コストは先進国よりも高く、銀行システムが存在しないために送金自体が不可能な場合も多いが、ビットコインなら、銀行がなくてもネット環境とスマホさえあればいつでもどこからでも国境を越えた送金ができる。グローバル展開を進めたい事業者にとっては大きなメリットだ。
◆商品やサービスを購入できる道筋づくりがカギ
では、我々がビットコインを利用するにはどうしたらいいのだろう。
ビットコインは電子データなので、専用のビットコインウォレットに残高を記録する形で保有する。サービス提供者に口座をつくり、現金を振り込んでビットコインを入手。ウォレットに残高を記入し、ネットで買い物をしてビットコインで決済すれば品が届く。これから日本でビットコインが手軽に使えるようになるためには何が必要なのか、ビットバンク事業開発部長の三原弘之氏に聞いた。
「マウントゴックスの破綻以来、ビットコインを日本円と取り引きする環境の再構築が進んでいます。しかし、ビットコインで商品やサービスを購入できる場所が圧倒的に足りません。ビットコインで商品を購入できる道筋をつくることが普及の鍵になります。当社での決済サービス(ビットバンクペイ)を利用すれば10円からの超少額決済が可能です。決済手数料は0~1.5%で月額固定料金も初期費用も無料。『単価10円のビジネスができるようになります。チャンスがぐっと広がります』と事業者の方へ利用を呼びかけています」
◆「いいね」の投げ銭感覚で巨大ビジネスに化ける可能性?
三原氏の言う「単価10円のビジネスができるようになる」とはどういうことか。経済学者の野口悠紀雄氏は「マイクロペイメント」という概念でこれを説明する。
現在の送金コストは送金額の2~3%である。これがゼロに近くなると、利益率が低くて既存の送金システムでは成立しなかったビジネスも成立するようになる。「デジタルコンテンツの切り売り」もその一つである。
実は、楽天は2013年9月に動画配信サービスを展開する米Vikiを買収。三木谷浩史社長はその時のあるインタビューで、「次の要はデジタル。本やDVDもデジタルに代替してゆく。物は届けなければならないから」と言っている。物を届けるにはコストがかかるが、デジタルコンテンツはゼロに近いというわけだ。楽天のビットコイン参入はこの時にもう視野に入れていたのかもしれない。
ビットコインが普及し、デジタルコンテンツの切り売りが可能になれば、連続番組の一話分だけとか、好きな漫画家の好きなカットだけとか、コンテンツの中の自分が欲しい部分だけを購入できるようになる。価格が低くて、送金などで「手数料負け」していた商品やサービスも事業化できるかもしれない。
「商品はプロが出すもの」という観念もなくなるかもしれない。例えば、YouTubeなどの動画サイトの投稿作品に、仮に0.0001ビットコイン(現レートで約3.8円)を「いいね」感覚で「投げ銭」でき、世界中の何十万人、何百万人から応援してもらえるようになれば、いまは実益がないに等しいネット投稿で巨額の「おひねり」を得る人が出現する。もうビジネス化を企てている人もいるだろう。2015年はビットコイン革命元年になるかもしれない。
(ライター 古俣慎吾)