B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

株主総会 シーズン・イン!
~社外取締役の設置が震源に~

 

◆経済界の反発理由とは?

 
 社外取締役を設置することにはデメリットもある。
 全国銀行協会は平成23年10月20日に法務省に提出した意見書で、「社外取締役の選任を義務付けることには反対する」と述べている。理由としては、社外取締役の設置は企業統治の強化とイコールではなく、「一律に社外取締役の導入を義務付けることは、本来それを必要としない銀行・企業にとっては結果的に経営・管理コストが増大するのみ」であることを挙げている。経団連も翌年1月24日に「会社法制の見直しに関する中間試案」に対する意見を表明し、社外取締役設置のルールを一律に導入することが「各企業の規模・業種・業態に適したガバナンス体制の構築を大きく制約する結果にしかならない」という意見を表明した。
 
 確かに、社外取締役を招聘するとなれば、それだけの報酬を支払わなければならず、また招聘した社外取締役に機能してもらうための社内の体制づくりも必要となり、企業側の負担は一時的に大きくなる。
 
 しかし、企業は増え続ける海外投資家や、投資という行為そのものに関心を持ち始めた日本の個人投資家に自社の魅力をアピールして、生き残る道を拓かなければならない。投資家が「企業統治の強化について、どのような姿勢で取り組んでいるか?」に注目している現代の環境下で、社外取締役を選任し、社外取締役がその機能を果たすことができる環境づくりを進めているという姿勢を示すことは、投資家からの資金調達を円滑に進めることにつながるのだ。
 
 

◆株主との良好なパートナーシップを築くために

 
 銀行界・経済界全体としては反発の声も高い社外取締役の設置義務化であるが、個々の企業の対応はどうだろうか?
 東京証券取引所が平成25年9月10 日に発表した「東証上場会社における社外取締役の選任状況等について」で、社外取締役を選任する上場会社(市場第一部)の比率が60%を突破したことが明らかになった。企業側も社外取締役という存在を重要視し始めているのだ。
 
 株主総会で、社外取締役を設置する・しないのいずれの選択を株主に提示するにせよ、企業は株主が納得できる説明を行う必要に迫られる。平成22年3月末に「企業内容等の開示に関する内閣府令」が改正され、上場企業は「株主総会における議決権行使結果等の開示」を行わなければならないとされた。つまり、企業が株主総会で提示した議案や人事が「どの程度の賛成を得て可決されたのか?」が公になるのだ。
 インターネット上で「議決権行使結果」「臨時報告書」を公開する企業もあり、その中では取締役候補者の一人ひとりについて「何%の賛成により可決・否決されたのか」が克明に記されている。たとえば他の取締役が90%以上の賛成を得て可決されている中、1人だけ70%台の賛成率しか得られずに可決されている場合、そのような人選について「企業側・株主側の思惑がどうであったのか?」「どこですれ違いが生じたのか?」ということに思いを馳せながら報告書を読むと、そこには様々なドラマが隠されているようで興味深い。
 
 社外取締役を選任することは、「経営と執行の分離」を強化でき、客観的な経営の意思決定や、社外の人間ならではの知見を経営に活かすことができるなどのメリットも多い。投資家に対しても、透明性の高い経営を行っていることをアピールする材料となる。日本経済のさらなる成熟に向け、本年の株主総会がエポックとなり、企業と株主の直接対話が促進されることを期待したい。
 
 
(ライター 河野陽炎 )
 
 
 
 

 

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事