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初夢は東京五輪
~「はだしの経済」に靴を売れ~

 
 

◆クールジャパン戦略とのコラボに期待

 
 6年越しの準備には様々な手法があるが、現状で最も利用しやすいのは、クールジャパン戦略に絡めた情報発信だろう。経済産業省が主導するこの戦略は、日本独自の 「クールな文化」 の情報を海外に向け発信し、イメージアップ効果や物販の促進を狙うものだ。企画が採択されれば、経産省から最大5000万円の助成金が支給される。
 五輪が開催されるとなれば、世界中からテレビカメラやレポーターが東京にやってくる。直接効果と縁の薄い地方自治体や民間企業も、東京五輪を一種の 「見本市」 として利用することで、広く世界に向けて観光客の誘致や特産品の宣伝を行うことができる。
 
 すでにいち早く東京五輪とクールジャパンをリンクさせようと目論む自治体も現れている。さつきの盆栽が特産品である栃木県鹿沼市では、2013年7月に 「BONSAIのある粋なライフスタイルを欧州へ ~木のまち鹿沼のさつき盆栽プロモーション~」 という企画がクールジャパン戦略推進事業に採択された。2020年の東京五輪開催決定を受け、五輪需要を視野に入れた企画にシフトするため、海外調査などを行うという。
 
 56年前の東京五輪と今回との最大の違いは、ネット環境にあるかもしれない。小さな自治体や中小企業、個人ですら、海外に向け独自に情報を発信することができるのが、新しい東京五輪の世界なのだ。
 それゆえクールジャパン戦略には二重の意味を見いだすこともできる。すなわち、採択されれば助成金がもらえるが、採択されなくても、戦略の趣旨に添った情報展開を行えば、海外からの関心を集めやすい、という 「メリットの二階建て」 である。
 
 

◆日本食! 文化! 地方から五輪に乗っかる

 
 クールジャパン的展開の一例を挙げてみよう。昨年12月に 「日本食文化」 がUNESCOから世界文化遺産として登録された。食文化に関連する分野は広く、単に和食を提供する外食店などにとどまらない。各地方には独自の食材があり、陶磁器や漆器などの美しい和食器が見られる。
 さらに調理器具として欠かせないのが和包丁だ。ステンレス鋼を打ち抜いて研磨しただけの洋包丁と異なり、和包丁は柔らかい鋼材に硬い鋼材を接合し、叩き延ばしてつくられる。ステンレスに比べて刃の硬度が高いため、切れ味は段違いに鋭い。刺身の滑らかな舌触りは、この包丁なくしてありえない。和包丁は日本文化に関心を寄せる外国人の間ではすでに人気が高く、道具店が集まる東京・合羽橋では、実際に和包丁を買い求める外国人観光客が増えている。
 
 メーカーの中にも、海外進出に意欲を見せる企業が現れつつある。名刀 「関の孫六」 で知られる岐阜県・関市では、同市に本社を置く(株)貝印の海外進出企画 「『日本の料理と食の技(わざ)・文化』ロシア市場進出プロジェクト」 が、平成25年度クールジャパン戦略推進事業に採択された。関市の他にも、堺市など刃物を特産とする地域は日本各地に点在する。海外からアクセスしやすいよう、ネットを利用して多言語による情報発信などを行えば、世界を市場として事業展開する余地は大きい。
 
 世界を網羅するネット環境をベースに考えれば、2020年を見据えて、実現可能な工夫は数多い。「多言語を話すゆるキャラ」 や 「ブロガーなど発信力のある外国人を集めるイベント」 など、アイディアを凝らした情報発信に努めることで、コストをかけずに大きな収穫が期待できる。半世紀ぶりに訪れる大チャンスをつかむべく、今年を 「東京五輪経済」 元年と位置づけてみてはいかがだろう。
 
 
 
 

(ライター 谷垣吉彦)

 
 
 
 

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