新しい環境に必要な心構え
新しいドラマや映画の撮影が始まるときは、未だに緊張しますよ。初日からすごく長いセリフがあったり、重要なシーンの撮影があったりすると、特に緊張します。いろんな現場がありますけど、どんな現場でも最初に行うのは、自分に何が求められているのか理解すること。僕はよく物事をスポーツに例えるのですが、「今回はフォワードかなぁ」とか「ピッチャーの役割かな」と考えるんです。勘を頼りにしてみたり、空気を読んでみたり、監督の顔色をうかがったり。いろいろと試行錯誤していますよ。
もし、僕から新しい環境でのコミュニケーションについてアドバイスするとしたら、「とりあえず気合を入れる」ということ。周りの人に対して気を遣う必要のある現場かもしれないし、職場の方々に挨拶をして回らないといけないかもしれない。そういったシミュレーションをしたうえで気合を入れていれば、その職場の雰囲気に合わせて「ちょっと力を抜いたほうがいいかな」と調整できるじゃないですか。
逆に何も考えず、心の準備をしないままで行くと「準備してこなかったのか」と言われたときに困ってしまう。「今からしてきます」と言うわけにもいかないですよね。そういった意味で、心の準備をして、気合を入れていくことが大事なのかなと思っています。
その役の考え方を理解する
ただ、実際の自分が何か行動を起こしたときの考えを全て説明できるかと言われたら、できないんですよね。「なんとなく、そうかなと思ったから」ということが多くある(笑)。だから、演じる役の考え全てを明確に説明できるのは、実はそんなにリアルじゃないんです。でも、自分のこと以上に、その役のことを説明できるようにと考えてはいますよ。そうすることで、価値観が合わない役柄であっても、演じられるんだと思います。
もちろん、その時々の現場によって、準備の仕方は違います。演じる役について膨大な資料を用意して役者に渡す脚本家もいれば、「何も考えないで、セリフに抑揚もつけないでください」という監督もいる。どういった要求であっても、一緒に良い作品をつくりたいと思った方の言うことですから、求められているものを、求められている形でお渡しするように努めるだけです。