B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

取引先と従業員を思い
安全な足場を築く鳶会社

 

基本を忠実に守ることの大切さ

 
glay-s1top.jpg
鈴木 そういうことってどの業種の仕事においても、大事なことですもんね。家業に戻ってからの再修業はいかがでしたか?
 
山田 昔ながらの職人ばかりの会社に出戻ったわけですから、それは厳しかったですね。例えば、材料を担いだ状態で変に片足に体重をかけて歩くと「バカヤロー!」と怒鳴られるんです。その時はなぜ怒られるのかわからなかったのですが、後になってそれが足を踏み外さないため、つまり現場で安全を確保するために大事なことだったのだとわかりました。
 
鈴木 山田社長のお話をうかがっていると、2002年から2年間、浦和レッズの指揮を執ったハンス・オフト監督との出来事を思い出します。監督は当時、選手に「試合中のポジション・チェンジは禁止」という指示を出しましてね。「それじゃあ、サッカーにならない」と僕ら選手は反発したのですが、「自分のポジションを守ることは、サッカーの基本だ」と監督は譲らない。ところが、嫌々ながら指示に従っているうちに、チームは強くなり、結果もついてくるようになったんですよ。
 
山田 その指導があったからこそ、後の強いレッズが誕生したんですね。
 
鈴木 そうなんです。僕もその出来事があったからこそ、基本である型の大切さを学びましたし、型を覚えなければ“型破り”もできないと知りました。特に鳶職のように安全確保が重要な仕事であれば、ベテランの職人さんたちが厳しく指導するのも当然でしょうね。若手時代を経て、山田社長が経営を担うまでには、どのような経緯があったのですか?
 
glay-s1top.jpg
山田 それまで父には、「お前に経営などできるわけがない」と言われ続けていました。でも私としても、接客業や職人業で人を動かすコツは勉強してきた、という自信があったので、2006年に後を継がせてもらったんです。
 
鈴木 山田社長が後を継いでからは、どのような方針で職人さんたちと接しているのでしょうか。
 
山田 職人とのコミュニケーションで心がけているのは、顔を合わせたら必ず声をかけることです。朝、顔を見て元気のなさそうな職人がいたら「どうした、飲み過ぎか」なんて聞いてみる。20人程度の会社ですから、全員と話しても数分で終わります。その小さな心がけを続けることで、みんなが気持ち良く仕事ができて、夕方には笑顔で帰ってこられるようになるんですよ。