俳優の仕事は
役との巡り会いを待つこと
舞台やテレビドラマ、映画やバラエティ番組など垣根を越えて活躍している、俳優の八嶋智人さん。「人前に出たい」「目立ちたい」という気持ちから芝居に興味を持ち、その気持ちのまま、現在も芝居を楽しんでいると言う。「仕事という感覚はあまりない」と笑う八嶋さんに、楽しむために心がけていること、仕事への考えについて聞いた。
役を自分に引き寄せる
僕は中学生の頃から、お芝居に興味を持っていました。なぜなら、とにかく人前に出て目立ちたかったから(笑)。今も当時の感覚のままなので、実はお芝居に対して“仕事”という考えを持ったことはあまりないんです。
自分が「こうありたい」と思うものを突き詰めたら今の場所にいたので、本当にやりたいことをやっているだけ。でも、いくら「やりたい」と思っていても、オファーしてもらわないと何もできません。だから僕に「こういう役を演じてほしい」と言ってくださる方がいるのは、本当にありがたいことですよね。
役づくりに関しても、僕はしないんですよ。演じるというのは、自分の中にある一面を増幅させることだと思っています。自分自身で実感できるものしか、出せないんじゃないかな。よく考えているのは、「ゼロを1と言ってはいけない」ということ。自分の中に1しかない要素だとしても、それを100まで増幅させて演じるんです。でも、ゼロのものを1と偽ることはできません。
中には、本当に何もないところからキャラクターを生み出す天才的な俳優さんもいますね。役に自分から近付いていくタイプなのでしょう。僕は、役を自分に引き寄せるタイプです。演じる役と同じ一面があるかという、とっかかりとなる軸があるかないかが、とても重要なんですよ。