鰐田 小学生の時に有名バンドのサックス奏者に憧れたのが始まりです。実は中学の時に、チェッカーズのサックス曲『Room』をバンドメンバーと演奏したんですよ! 最初の就職は他業界だったものの、2008年に地元の大手総合楽器メーカーに転職し、約15年間サックスの生産現場で最終調整や検品を行っていました。その傍ら、修理法も習得し2019年に独立したんです。
鶴久 Roomは私が作曲した曲なので嬉しいです! メンテナンスの仕事で注力されているのはどんな点ですか。
鰐田 プレイヤーの性別、年齢、体格の他に、経験年数やプレイスタイル、練習頻度など細かくヒアリングし、オーダーメイドで整備を行うことです。調整がうまくできなければ、楽器をお戻しした際に「自分の楽器ではない」と感じさせてしまう恐れがありますからね。
鶴久 わかります! バンドメンバーもメンテナンス後のサックスに違和感を覚え、不満を吐露していたことがありました(笑)。調整の際は本人の利き指や力の入れ具合なども考えますか?
鰐田 もちろんです。例えばキーに付けるコルクは、指が強い人やフュージョン、ファンクを演奏する人に合わせて硬めのラバーコルクに変えるなど、一人ひとりに合った調整を行います。
鶴久 整備はコミュニケーション能力も問われる繊細な仕事ですね。
鰐田 そうなんです。サックスには本人のイメージが色濃く反映され、吹く人によって音色が変わります。そうした使い手の思いを理解するためにも、私自身、基礎練習は欠かしません。
鶴久 素晴らしいですね。やはり楽器は奏でてこそ魅力に気付くものです。
鰐田 現在、近隣の中学校では本来の音色が出ないほど整備されていない楽器が増えていて、子どもたちが楽器を楽しく奏でられる環境とは言い難いです。そこで私たちは、安価で楽器の整備を請け負う活動を計画しました。大手楽器メーカーさんよりもフットワーク軽く、かつ専門技術もある私たちのような工房が立ち上がることが重要だと思っています!
鶴久 使い手の思いを汲んで整備される鰐田店主には、ぜひプロジェクトを成功させてほしいです。専門技術を持つ工房から若者たちへ楽器の楽しさが伝わっていくこと、楽器の街・浜松から、全国にその波が広がっていくことを願っています!
鶴久 使い手の思いを汲んで整備される鰐田店主には、ぜひプロジェクトを成功させてほしいです。専門技術を持つ工房から若者たちへ楽器の楽しさが伝わっていくこと、楽器の街・浜松から、全国にその波が広がっていくことを願っています!
「仕事を楽しむ」とは‥
私がメンテナンスしたサックスを楽しそうに演奏するお客様の姿を見ることが、私にとっても楽しい瞬間です。
(鰐田知典)