久門 障がい者の方々に成功体験を積んでいただくことです。例えば問いかけに返事をする応答訓練でも、声を出せたことに対してきちんと評価する。そうすれば、次の訓練でも「声を出そう」という前向きな気持ちを持ち続けてもらえます。最初から大きな目標を掲げても実現は難しいもの。小さな成功体験を積み上げることが大きな成功につながるという考えで、施設を運営しています。
タージン そのためには、利用者の方々と真剣に向き合うことが大事ですね。
久門 はい。訓練のどこでつまずくかは、利用者様により異なります。ですから各スタッフが一人ひとりの利用者様としっかりと向き合い、気付いた点を関わる全ての人で共有するようにしています。それらを踏まえてご本人に接することで、総合的な情報をフィードバックしながら利用者様の成長につなげるようにしています。
タージン 障がいを抱える方々にはできないこともある。そうした、できなかった経験も無駄にはできませんよね。
久門 ええ。できなかったことを理解して、どうすればできるようになるかをご自身にも考えていただく。“自分を知る”というステップを踏むことで、初めて次の段階へと進めるようになるんです。
タージン 福祉の仕事は、どうしても「やってあげる」という考えになりがちです。しかし久門代表は、障がい者の方々の自発性を重視していると。
久門 「利用者様に寄り添い過ぎない」と表現すると言い過ぎかもしれません。でも、福祉とは障がい者の方々と社会の間に立ち、お互いの差を埋めることだと思うんですよ。利用者様の立場にあまりにも寄り添い過ぎると、自分に自信を持ち、自発性を高めてもらうのが難しくなってしまいますから。
タージン 障がい者と共に生きる社会をつくり上げるには、バランスを取ることが必要なんですね。利用者さんが周囲との壁を感じないよう、愛のある適切な距離感で訓練することは、必ずご本人に役立つときが来るはず。久門施設長は今、とてもお仕事に充実感があるのではないでしょうか。
久門 そうですね。ただ、それは同じ方向を向いて共に歩んでくれるスタッフがいるからこそ。1人でここまで来ることはできなかったので、感謝の気持ちでいっぱいです。
久門 そうですね。ただ、それは同じ方向を向いて共に歩んでくれるスタッフがいるからこそ。1人でここまで来ることはできなかったので、感謝の気持ちでいっぱいです。
「仕事を楽しむ」とは‥
たとえ苦手と思っていたことでも真剣に取り組めば、その仕事の持つ本当の面白味を知ることができる。それが、仕事を楽しむ秘訣だと思います。つまずきがあったとしても、自分で考えながらやり込んでみる。そうすれば、その仕事を本当の意味で楽しめるのではないでしょうか。
(久門孝嗣)