工業用機械部品からモニュメントまで、様々なアルミ鋳物を製造する有限会社弘中鋳造。父の後を継ぎ2代目代表取締役となった田中和人氏は、人の目に触れる機会が多い生活用品もつくりたいと事業分野を拡大。ものづくりの楽しさを実感し、スタッフにも「職人としての自覚とプライドを持ってほしい」と、さらなる飛躍を促している。ひと夏で10㎏も体重が減ることもあるという、過酷な現場で仕事に燃える職人の魂に迫ってみた。
軽くて錆びない丈夫なアルミ製品を鋳造
田中 以前は、工業用の機械に使われる部品がほとんどでした。現在はその分野を中心としつつ、街中のモニュメントや街灯の照明カバーなど、様々な種類のアルミ製品もつくっているんですよ。
矢部 工場では、一つひとつの工程を手作業で行うそうですね。暑くて大変でしょう。
田中 そうですね。特に真夏の工場は気温が40℃以上になります。そんな場所で大汗をかきながら働いていると、慣れない新人だとすぐに10㎏くらい体重が落ちてしまいますからね。
矢部 そんなに!? 工場を拝見して「かっこいい職場だな」と思いましたが、かっこいいだけでは済まない厳しさもあるのですね。ところで、弘中鋳造さんがアルミの鋳物に特化しているのは、なぜなのでしょう。
田中 弊社はもともと、私の父が創業し銅合金の製造を手がけていました。ある時期からアルミの鋳物を中心にし、その鋳造技術を突き詰めてきた会社なんですよ。何しろ、鉄と違ってアルミは錆びませんし、水に強く腐食することもありません。軽くて丈夫なので機械の部品としてもモニュメントとしても、非常に長持ちするのが特長ですね。実は弊社の製品は、一般の方の目に触れるところにも使われているんですよ。