――まず、この書籍は4章立てになっていて、第1 章が『「事例に学ぶ」経営者の思い描く、“あるべき姿”をオフィスに落としこみ、社風を変える』、第2章が『「常識を疑う」オフィス空間を見直して経営課題を解決する 14 カ条』、第3 章が『「特別対談」行動科学に基づく空間づくり 友野典男先生(明治大学元教授)』、第4 章『「これからのオフィス」コロナ禍のオフィスに求めるべきこと』という構成になっています。
はい。新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、この1年でテレワークを導入した企業が増えました。その結果、各企業でオフィスを縮小させる動きが出始めていますよね。当社では、「オフィス空間は経営課題を解決する経営資源である」という考えで事業を展開しておりまして。要するに、オフィスは本来、企業を大きく躍進させる力を持っているという考え方です。
しかしながら、その役割を十分に発揮しているオフィスは非常に少ないと感じています。そこでこの書籍では、経営者の思い描く理想の姿へ変化を促すオフィス空間とはどのようなものなのか、それにより会社はどう変わっていくのかを説明しています。最終的に、オフィスを「単なる出勤する場所」ではなく、企業の躍進を促すことができる重要な経営資源であるということを感じていただけると嬉しく思っています。
そのために第1章では、実際に当社にご相談いただいた企業の経営者の方々にもご登場いただき、実際に空間の変化がきっかけとなり、経営者の思い描く“あるべき姿”へ会社が変化していった事例を紹介しています。また、第3章では日本での行動経済学者の第一人者である、元明治大学情報コミュニケーション学部の友野典男先生にもご登場いただき、“人”がどのような時に行動を変えるのか等、脳科学の視点を交え、あらゆる角度からお話いただいています。
――今回、書籍を出版したのにはどういうきっかけがあったんですか?
――御社が取り組む行動科学に基づく空間コンサルティングについて、広く世間に呼びかけていこうという試みの一つなんですね。
そうです。現在、テレワークの普及で、オフィスを縮小させる動きがでていますが、“出勤した人が快適に使える”ことを主眼に置いたオフィスが増えつつあります。それを私は、ものすごく危惧しているんです。出勤した人だけのコミュニケーションを考えても仕方がなく、もっと組織全体から、コミュニケーション設計を考える必要があり、その場合、オフィスは社員同士が唯一顔を合わせる貴重な場であり、それをどう機能させるかがとても重要なのです。しかしそのように考えている経営者の方は、とても少ないと感じています。ですから、オフィス空間がいかに重要なものであるか、それに気付きを得られるようなことを、この書籍の中で説明しているんです。
もしかすると、この書籍を手に取っていただいた方は、「テレワーク時代のオフィスはこういうデザインで」「オフィス内の動線はこうすべき」などと、具体的なオフィスのつくり方が書いてあるのかと期待するかもしれません。でも、そういうことは全然書いていないんですよ。
――そういうことではなく、経営者が目指したい組織の本質は何なのか、そこを明らかにして、それを実現するために、オフィスがどのように寄与するのかということ書かれていますよね。
そうです。この書籍を通じて、理解していただけると嬉しいと思ってるのは、「空間を変えたら、社員が変わり、会社も変わる」ということです。それが最も言いたいことです。
――ただ、最初から「オフィスを、空間を変えることで社内を変えたいんですけどどうしたらいいですか」というような相談は少ないんじゃないですか。それよりも、「社内の雰囲気をよくして、人を採用したいんですけどどうしたらいいですか」というような相談のほうが多そうです。
おっしゃるとおりです。弊社に直接お問い合わせいただく場合、「ちょっと移転を考えているんです」とか、「オフィスをおしゃれな感じにしたくて」とか、そういうご相談が多いですね。しかも、その相談自体、経営者の方ではなく、総務担当の方などからくるんです。ですからまず、その総務の方に弊社のやり方を共感していただけるかどうか。そこが第一ハードルですね。そして最終的には経営者の方が、弊社の空間創りに共感いただくことができ、そのうえで協同していただけるかどうかにかかってきます。そうでないと、弊社のオフィスづくりは効果が出にくいです。
例えば、経営者の方が、社員同士のコミュニケーションを活性化するようなオフィスにしたいと考えたとします。それで、とても快適なコミュニケーションスペースが完成したと思ったら、経営者の方がそこに居座り、その場で社員を叱りつける等するようになってしまった。その結果、社員は、そのコミュニケーションスペースをなるべく通らないよう社内を移動するようになってしまったという例があります(笑)。これでは投資したお金が無駄になってしまいますよね。
空間づくりは投資なので、その目指すところの根本の部分を理解していただけないと、そういうことが起きてしまうわけです。ですから当社としても、経営者の方には何のためにその空間をつくるのかということを、きちんとグリップしていかなければなりません。
結果として、当社のお客様は、なんでオフィスのここに扉があるのか、なんであそこに仕切りがあるのかの意味を、理解してくださっています。大きな組織であれば、経営者、経営幹部の方々みんなにそれを理解していただく必要があります。
――経営者がまず理解し、それを幹部に浸透させて、幹部は自分が管理する部署の社員にその意図を伝える。トップダウンの形でそこまでしないと空間をデザインすることで企業を変えるのは難しいということですね。それでは次回は、第2章のお話と、御社が手がける行動科学に基づく空間コンサルティングとはいかなるものかについて、掘り下げてうかがいたいと思います。
~『経営者のための経営するオフィス』著者、翔栄クリエイト・河口事業部長に聞く~
vol.1 オフィス空間を変えると、社員も変わる!
(取材2021年4月)
著者プロフィール
河口 英二 Kawaguchi Eiji
株式会社翔栄クリエイト 執行役員・ビジネスクリエイション事業部 事業部長
経 歴
1970年愛知県生まれ。人材サービス会社にてアウトソーシング事業で経験を積んだ後、2009 年、事業コンセプトに共感し、株式会社翔栄クリエイトに入社。同年、執行役員および「行動科学に基づく空間創り」を行うビジネスクリエイション事業部事業部長へ就任する。以降、10年以上にわたり空間クリエイト事業で数々のプロジェクトに携わり、企業の業績向上支援となる空間づくりを手がける。数々のセミナーにも登壇、講演数は 450 回を超えるほか、YouTube配信なども展開中。
翔栄クリエイト河口の空間創りチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC3eOjbw-VQMdf9-QKKl6RQA
株式会社翔栄クリエイトビジネスクリエイション事業部
書籍情報
経営者のための経営するオフィス
著者 河口英二
出版社:株式会社ファーストプレス
出版日:2021 年 2 月 22 日
価格:¥1500 (税抜き)