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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
 

自身の実感を演技で表現し
説得力のある舞台を創造

 
2017年4月に開場20周年を迎えた劇場、世田谷パブリックシアター。同劇場で15年にわたって芸術監督を務めるのは、狂言師の野村萬斎さんだ。そんな萬斎さんが演出・出演を務める舞台『子午線の祀り』が、今月1日から世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演の1つとして上演される。萬斎さんはこれまでに『子午線の祀り』において2度同じ役を演じてきたものの、その時々によって役に感じる印象は変わるという。大事なのは、現在の自分の“実感”を伝えることなのだと語ってくれた。
 
 

年を重ねることで表現の幅が広がった

 
世田谷パブリックシアターでは、開場20周年記念公演のプログラムの1つとして、平家物語を題材にした戯曲『子午線の祀り』の上演を今月の23日まで行います。私は演出を手がけるとともに「新中納言知盛」という役を務めさせていただくことになりました。知盛を演じるのは今回で3回目です。
 
最初に知盛を演じたのは33歳の頃でした。ちょうど役の年齢と同じでしたね。しかし、今になって思うと、知盛を33歳で演じるのは少し早かったかもしれません。作中の人物たちが生きた時代は、現代のように長生きできたわけじゃありませんよね。当時の33歳というのは、現代でいうと50代、ちょうど今の私くらいの年代のような落ち着きがあったのではないかと思うんですよ。しかも、作中では実の子どもが自分を庇って目の前で死んでしまう。そういった心境は、私の息子が知盛の子どもと同じ年頃になった今だからこそ、よりリアルに演じられるのかなと感じています。
 
33歳で知盛を演じたときは、とにかく台本に書かれていることを正確に伝えようという気持ちでした。2度目の知盛を演じた40代のときには、「運命と戦う人」というテーマを自分の中で持っていましたね。そして今回は、「運命に気付いている人」というテーマを掲げているんです。これは、台本を読んだときに知盛に感じたもの。やはり、月日が経つと同じ作品を読んでも“実感”は変わってくるものですね。
 
私が何かを演じるうえで大切にしてるのは、“実感”を伝えること。自分が何も感じていないこと、自分の中に引き出しがないものを演じるのは難しいものです。自分の経験から培ってきた考え方を観てくださっている方に伝えないといけません。でないと、説得力もなくなるでしょう? 例えば、33歳のまだ若い役者が老成した言い回しをしていては違和感があるはずです。演じている本人にリアリティがあるという“実感”がないと、空虚な演技になってしまうと考えています。
 
そういった意味では、40代、50代と年を重ねてきて表現の幅が広がったように思いますね。老いを意識することが、こんなにも表現に影響するのかと驚いています。また、シェイクスピアの『マクベス』やギリシャ悲劇の『オイディプス王』を演じた経験も大きいと思います。これまでは攻めの姿勢で演じていたものを、もっと静かに、それでいて存在感のある演技ができるようになったんです。最近は老眼で物が見えづらくなりました(笑)。でも、そういったことも表現の幅を広げることにつながるんですよ。
 
 
 
 
 

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