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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 

多様性を表現できる未来のために
映画文化の発展に貢献

 
11月25日にBlu-ray&DVDが発売された、映画『海よりもまだ深く』。指揮を執った是枝裕和さんは、これまでに『誰も知らない』や『そして父になる』、『海街diary』などの監督も務め、数々の賞を受賞している。そんな是枝さんが、今作に込めた思いとは――。質問に対して真摯に答えてくれた言葉からは、映画やテレビなどが築き上げてきた“文化”への尊敬の意が感じられた。
 
 

もう一度阿部寛さんと樹木希林さんの親子を撮りたい

 
僕が『海よりもまだ深く』についてノートにアイデアを書き始めたのが、2009年頃。僕が監督を務めて、阿部さんに主演で出てもらった映画、『歩いても歩いても』が2008年の夏に公開されました。その作品で、樹木さんに阿部さんの母親を演じていただいていて。公開してすぐに、「もう一度、あの2人の演じる親子を撮りたい!」と思ったんです。その内容は全て、阿部さんと樹木さんが演じることを前提で書きました。
 
この作品は、樹木さん演じる母親が1人暮らしをしている団地での出来事を描いています。阿部さんと樹木さんの親子を撮ろうと思ったときに、亡くなるまで団地に1人で暮らしていた母を思い出し、それを基に話をつくることにしました。それと、僕が子どもの頃、団地で一番印象的だったのが、台風。台風が通り過ぎた翌朝の芝生に水の粒がついていて、それが反射してキラキラ光っているのがとてもキレイだった。それで、台風が来る話にしようと思いました。
 
撮影を許可してくれた東京都清瀬市にある旭ヶ丘団地は、実際に僕が住んでいた団地です。つまり、僕の母が1人暮らしをしていた団地。樹木さんもそれを知っていたので、撮影が始まる前に、母に関して何か残っているものがあれば持ってきてほしいと言われました。母が僕に宛てて書いてくれた絵手紙と母が写っている写真、それと実際に使っていた眼鏡を持って行ったんです。そうしたら、「この眼鏡使っていい?」と。もちろん使ってもらいました。樹木さんと母は全く似ていないのですが、あの眼鏡をかけている姿を見ると、なんだかドキっとしましたね。
 
作品の中には、僕の記憶の中から再現したものも盛り込んでいます。正確に言うと、記憶の中にある“音”です。例えば、お風呂を沸かすときの給湯器のレバーを回す「ガチャコン」という音や、新品のスパイクで板の間を歩くときの音、硯で墨をするときの音。これらは、全部僕が現場で試行錯誤しながら効果音をつくりました。音が喚起する記憶を大切にしたいと思ったからです。あとは、氷らせたカルピスを削る音もそうですね。あの場面は「俺もやったよ、あのカルピス」というお声を多くいただきました(笑)。
 
 
 
 
 

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