三浦 僕は最近まで、特許取得を支援する専門家がおられることを知りませんでした。山本先生はいつ頃から弁理士のお仕事を目指していらしたのですか?
山本 私も、弁理士について詳しく知ったのは社会人になってからでした。私は大学を卒業後、営業職に就きたくて大手食品メーカーに就職しましたが、配属先は特許、つまり知的財産を扱う知財部で、新しい食品やその製造機械の特許取得の手続きを担当することになったんです。当時は「地味な部署に配属されたなあ」と嘆いていましたね(笑)。
三浦 つまり、好んでこの道に入られたわけではなかったわけだ。
山本 正直に言うと、そうでした。それから数年して営業部に異動が叶ったのですが、会社が大きな訴訟に関わったことをきっかけに、また知財部に呼び戻されましてね。以降は特許一筋ですから、会社は私の適性を見抜いていたということでしょう。
三浦 上司や人事担当者は、何か感じるものがあったんでしょうね。今は嫌々ではないでしょう。
山本 もちろんです。むしろ楽しい。ただ、私は他の弁理士とは少し毛色が違うと思うんですよ。特許事務所の仕事は会社や研究所が生んだアイデアを特許化することで、その部分は同じなのですが、メーカーの知財部や営業部、それにコンサルティング会社の知財部に勤めていた経験から、クライアントの本当のニーズがよく理解できます。
三浦 本当のニーズ? 特許を取ること以外のニーズがあるんですか?
山本 では三浦さんにお聞きしますが、サッカーの目的はゴールを決めることでしょうか。
三浦 そりゃそうですよ! ――いや、ちょっと待ってください。違うな。試合に勝つことだ!
山本 ですよね。特許も同じで、取ることではなく、特許を活かして事業で成功することが目的です。特許は事業を守り育てるためのツールなんです。でも、ややもすれば弁理士は「特許を取ること」ばかりに意識が行ってしまう。それは違うということです。
三浦 なるほど、サッカーでも試合の勝ち負けより、自分のゴールばかりを気にする選手がいます。でも誰かがハットトリックを達成した試合でも、負けてしまうことがありますよ。