◆注目度上昇中の鳥取
世界初の美術館とは
世界初の砂像美術館として知られる鳥取砂丘 砂の美術館
館内には精巧な砂像が並ぶ。こちらは現在展示中の11期の様子
2017年のインバウンド人気上昇都道府県3位に輝いたほか、水揚げ量日本一を誇るカニを前面に推し出した攻めのPRが話題になったり、鳥取市が住みたい田舎ランキングにおいて堂々の総合1位を獲得したりと、近年注目度が上昇している鳥取県。鳥取県といえば、多くの人が「鳥取砂丘」をイメージすることでしょう。
長い年月をかけて発達した鳥取砂丘は国の天然記念物にも指定されており、県内随一の観光スポットとなっています。実は、この“砂”をフィーチャーした芸術作品に触れられるスポットが、国内のみならず海外からも高く評価されているのをご存じでしょうか。
2006年にオープンした「鳥取砂丘 砂の美術館」。その名のとおり、砂を素材とした彫刻作品「砂像」を展示する、世界でも類を見ない美術館です。精巧につくりこまれた、圧巻の砂像――ここにしかない景色が広がっています。
◆砂から生まれ砂に還る
期間限定の芸術作品
記念すべき第1期。屋外展示のピエタ像
「鳥取砂丘を訪れる人に今までにない感動と感激を与えたい」――こうした思いから誕生した砂の美術館。「砂で世界旅行」を基本コンセプトに据え、第1期は「イタリア・ルネサンス」をテーマに、完全な屋外展示としてスタートしました。その後、第2期の「世界遺産・アジア編」からは仮設テント内での展示に。そしてついに2012年4月、5期となる「砂で世界旅行・イギリス編 ~語り継がれる大英帝国の繁栄と王室の誇り~」から、砂像のための展示施設を整備した現在のスタイルとなったのです。
総合プロデュースを務めているのは、砂像彫刻家兼プロデューサーとして国内外で活躍している茶圓勝彦氏。毎期、各国から砂像彫刻家を招いて世界最高レベルの砂像を展示するとあって、この美術館を目的に海外から訪れる人も少なくありません。
砂の美術館では、テーマとなる国や時代など、1年ごとに展示内容が変わります。驚くのは、会期が終われば、どの砂像ももとの砂へと還されてしまうということ。そうして、次のテーマに合わせて、砂像彫刻家たちは、情熱を注ぎ一から新たな砂像をつくりあげているのです。感動的な造形美でありながら、永遠には残すことはできない作品たち。ダイナミックな世界観に、そうした儚さを感じられるのも、砂像が見る人を惹きつける理由の一つなのかもしれません。
第1期テーマ「イタリア・ルネサンス」より受胎告知の砂像
第1期より、細部まで精巧につくりこまれたサンピエトロ大聖堂
第5期よりエリザベス1世と絶対王政
同じく5期のウェストミンスター砂像
今にも動き出しそうな衛兵パレード
◆砂像で巡る世界旅行
歴史や文化を表現
人気の館内ガイドツアー「ガイドと歩く砂の美術館」の様子
砂の美術館では、2018年9月現在、第11期となる「砂で世界旅行・北欧編~美しい大自然と幻想的な物語の世界へ~」を展示中です。フィヨルドをはじめとした北欧の大自然のほか、北欧神話やアンデルセン童話の世界を、ダイナミックなスケールかつ繊細なディテールの砂像で表現しています。会期は2019年1月6日まで。もちろん、この期間を過ぎると、砂像は再び砂へと戻されてしまうので、北欧をテーマにした作品を見られるのは今だけです。
館内では1日1回、スタッフによる館内ガイドも実施。砂像制作の裏話などを聞くことができ、展示をより深く楽しむことができます。このほか、グラスサンドアートやミニ砂像体験、クイズラリーといった参加型イベントが目白押しなので、事前にスケジュールの確認をお忘れなく。例年、1月初旬から4月末頃までは次期の作品制作のために閉館となるので、その点もご注意を。
現在展示中の第11期の作品。幻想的な北欧神話の世界を表現
第11期より。ノルウェー出身の画家、ムンクの「叫び」
世界各国の歴史や文化を砂像で表現する砂の美術館。次はいったい、どんな景色を見せてくれるのでしょうか。限られた期間しか存在できないからこそ美しい、砂像で巡る世界旅行。“一期一会”の感動が待っているはずです。
鳥取砂丘 砂の美術館
〒689-0105 鳥取県鳥取市福部町湯山2083-17
TEL 0857-20-2231
営業 9:00~18:00(土曜は~20:00)※イベント期間中は時間延長あり
開催期間中無休
http://www.sand-museum.jp/