B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
昨今、型にはまった枠組みではなく、人の個性に注目した活動が多くなってきたと話す宮本さん。そういった時流の変化を心から歓迎しているという。
 
 

演劇は進化し変化していく

 
演出家として活動していて気付いたのは、演劇はどのような人も全肯定しなければいけないということです。物語の中には、時として殺人を犯した人やその被害者も登場します。そのどちらも肯定する。それが大切なんです。「この役はこういった人」と最初から枠にはめていると、物語が進まなくなってしまいます。どういった役柄でも、どのような心情だったのか掘り下げることが重要です。
 
2019年に公開され、大ヒットした映画『ジョーカー』のように、悪役と呼ばれるキャラクターがなぜそうなったのかということに注目した作品も増えてきました。現実の世界でも、典型的に人を見るのではなく、その人の個性を考えようという風潮が強まってきたように感じています。僕は、その考えをすごく歓迎しているんですよ。
 
そういった意味で、最近はドキュメンタリー作品が好きになりましたね。特にNetflixでドキュメンタリーのものを多く観るようになりました。演劇にも、ドキュメンタリー分野はあるんですよ。何かしらの出来事の当事者が、実際にあったことを語る演劇です。イメージでいえば、講演会に近いかもしれませんね。
 
コロナ禍の中で、演劇をオンライン配信するなどさまざまな手法が試されるようになりました。コロナをきっかけにさまざまな形態が変わりましたよね。でも、それはきっと多くの人がもっと前から考えていた手法だと思うんです。
 
今後、コロナが収束したときに、すべてが以前のように戻るとは思っていません。人は進化して進んでいくものですから、演劇もどんどん形態が変化していくんじゃないかな。いつか「演劇って劇場に行ってみるものだったらしいよ」と言われるようになったらおもしろいですよね(笑)。ライブならではの良さを残しつつ、どのような進化を遂げるのか楽しみです。
 
 
今年で演出家としての活動を始めて34年になる宮本さん。長い期間を通じて、仕事に対する価値観にも変化があったという。どういった思いを抱えておられるのか詳しくお聞きした。
 
 

生き生きと働ける環境をつくる

 
glay-s1top.jpg
仕事への取り組み方は大きく変わりましたよ。20代の頃のように、「仕事は我慢してやるもの」という意識がまったくなくなりました。もちろん、当時も仕事を楽しんではいたんです。大好きな演劇の仕事ですしね。ただ、ずっと続けていると時として苦しみを感じることもあるんです。
 
演出家には、舞台を無事に公演させなければいけないというプレッシャーがあります。さらに、どれだけ多くのお客さんを動員できるかなど、考えることは多岐にわたるんです。舞台によってターゲット層も決められていますしね。単純におもしろい演劇を提供するだけではだめで、多くの条件付けがされているんです。
 
お仕事として対価をいただいているので仕方のないことではあるものの、より注目されている人が正しいとされていることに疑問を感じるようになってきたことも確かです。仕事に対して折り合いをつけなければいけないのは、演劇業界に限らず、どの職種でも起こりうることだと思います。
 
その中で僕にできるのは、出会った人たちが生き生きと活動できる場所を提供することだと思っています。だから演劇の垣根を越えてさまざまな活動を行っています。たまに「演劇の人が出てくる分野じゃない」と言われることもありますよ(笑)。でも、言いたいことがあっても口に出せない環境は危険だと思うんです。現在行っているオンライン授業も、人が生き生きと働けるようになる活動の一環ですね。
 
 
 
 
 

バックナンバー

最新記事

話題の記事