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MRJ披露 ひまわり打ち上げ
~航空・宇宙産業に実りの秋~

 
 
 いろいろと指摘されている要因のうち主なものは、米国における「官民の都合」である。安全性確保というお題目の下、米国当局が敷く厳しすぎる規制と、ボーイング社など大手航空機メーカーにおける発注先を絞る動きにより、本来のポテンシャルに比して日本企業の進出が阻まれている面は大きい。
 
 こういった障壁の中身は単純だ。厳しすぎる規制は米国が国内産業を守るためのものだし、ボーイング社による部品発注先の絞り込みは、発注にまつわる手間やコストを削減したい、という同社の思惑によるものだ。であるなら、規制に対してはTPP交渉の対象とする、発注先削減に対しては国内企業が合同チームを組んでひとつのユニットとして受注する、などの工夫があってもよさそうだ。
 
 

厳しい世界の包囲網

 
 それら「工夫の余地」はあるものの、航空・宇宙産業とも、簡単に事情が改善されるほど世界の包囲網は甘くはない。
 世界シェアの半分を狙うMRJも、うたわれている性能はたしかに素晴らしいが、今のところ運航実績はゼロだ。ブラジルのエンブラエル社、カナダのボンバルディア社など、小型ジェット旅客機を製造するライバルメーカーと競う際、このハンデは大きい。先進技術による燃費の良さが評価されて、現下では好調な滑り出しとなっているが、エンブラエル、ボンバルディア両社とも、次世代機ではMRJと同じエンジンを搭載する予定を立てている。そうなれば価格の叩き合いにならないよう、新たな技術を盛り込むなどの工夫を重ねて、差別化を図る必要が出てくる。
 
 宇宙産業に目を移すと、コストの問題が立ちはだかる。国際市場では、ロケットの打ち上げコストは70億円程度が平均だが、H2Aは90億円ほどかかる。最近になって諸外国から打ち上げを受注できるようになったのは円安が進んだためとも言われている。受注をさらに増やしていくには、安定した成功率を前提に、さらなるコストダウンを図る必要がある。
 
 そもそも航空・宇宙産業は、どこの国においても国がリードして推進していく国策産業である。もっと早くからしっかりとした指針を立てて推し進めていれば、現状のような立ち後れはなかっただろうが、防衛政策とのからみがあり積極的に推進しづらかった、という日本独特の事情がある。戦闘機やミサイルに転用できる技術も多いため、競争相手である欧米に足をすくわれないためにも、平和利用のアピールなど、しっかりとした総合的な対応が不可欠だ。
 
 

オールジャパンで勝ち抜け

 
 アベノミクスを掲げる安倍政権下で、国の姿勢にもようやく変化が見え始めている。経済産業省は今年7月、航空機部品の製造に乗り出す中小の自動車部品メーカーなどに補助金を提供する方針を固めた。また、防衛省で開発が進む国産ステルス実証機ATD-Xは、MRJのエンジンが米プラット・アンド・ホイットニー社製なのに対し、IHI(東京都江東区)がエンジンを手がける。機体からエンジンまですべてを国産技術で賄える時代が、もうすぐそこまできているのだ。
 
 宇宙産業では、文科省が2015年度予算の概算要求にH2Aの後継となるH3ロケットの開発費を盛り込む。大型ロケットを基本設計から新たに開発するのは実に18年ぶりだ。航空・宇宙産業におけるこういったオールジャパン体制には、これまでとはひと味違う「本気」が感じられる。
 
 今秋は長く低迷してきた日本の航空・宇宙産業にとって、ひとつの節目となる「実りの秋」である。世界各国が威信をかける巨大市場に名前と技を売り込んで「空の幸」を味わうべく、関連業種の企業は自社の可能性を再検討してみてはいかがだろう?
 
 
(ライター 谷垣吉彦)
 
 
 

 

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