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「JPX日経インデックス400」導入!
~企業成長と市場活性化への期待~

 
 

◆動き始めた日本企業

 
 ROEを高めるための具体的な手法としては、採算を重視した投資を行う、事業を選択し集中して経営する、自社株買いを行うなどの方法がある。
 実際、2013年には日本企業による自社株買いが積極的に行われた。その規模は2008年以来の高い水準と報じられ、キリンホールディングスによる8年ぶりの自社株買いや、キャノンによる2週間で500億円の自社株買いが話題となった。
 
 自社株買いには「自社の株価を引き上げる」という効果が見込まれる。それだけに、本来なら株価全体が上昇する局面では自社株買いが進みにくい。しかし、2013年には株価全体が上昇している中で、あえて自社株買いが行われてきた。この事実は、「日本の企業にもROEを重視する経営戦略への意識が高まり始めている」ということを示している。また、自社株買いを行うには、企業の手元資金が潤沢でなければならない。自社株買いを行うことは「それだけの余力がある」ことを投資家にアピールできるチャンスでもある。 
 
 とはいえ、自社株買いによってROEが高まる効果は一時的なものだ。自社株買いばかりに過剰な資金を回す企業の姿勢は「投資すべき、成長性の高い事業を持たないために、自社株買いに回す余剰資金が存在するのだ」という印象を、投資家に植え付けてしまう恐れもある。
 JPX日経インデックス400の銘柄選定においては、単年度のROEではなく「3年平均ROE」が評価の対象となっている。これは、継続的にROEが維持できる努力と姿勢が、企業に求められているということだ。
 
 

◆あらためて求められる経営姿勢とは?

 
 たとえば、極端なリストラ策を行った場合、人件費が抑制されるため一時的にはROEが高まる。しかし、技術の承継がスムーズに進まなくなるなどの弊害もあり、長い目で見れば企業の不利益につながる。また、企業活動に必要な資金を金融機関からの借り入れに頼ることで自己資本比率が低くなった場合にも、ROEは高まる。しかし、あまりにも負債の割合が高くなりすぎると、企業の財務健全性が損なわれる。高いROEを維持していくためには、一時的な効果しかない手法をとるだけではなく、成長性・将来性の高い事業を開発し、継続的に収益を上げていくべきなのだ。実際、選定にあたっては「3年累積営業利益」を良い状況に保つことも評価の対象にされている。
 
 JPX日経インデックス400の構成銘柄に選ばれなかった企業は、「現時点での収益性が低い」と評価されたことになる。しかし、毎年8月には構成銘柄の定期入替が行われるため、高い業績を継続して上げる企業努力によって、状況は変えられる。
 また、収益性が高い企業であっても、上場後3年未満の銘柄は選定されないこととなっている。非上場企業には、限られた金融機関からの借り入れにより資金調達を行ってきたケースも多い。そのような企業も、上場によって「不特定多数の投資家の目に留まる銘柄であり続けなければならない」という意識を持つようになる。時価総額が低いベンチャー企業なども、高い収益性を維持していけば、JPX日経インデックス400の構成銘柄に選ばれる可能性はある。
 
 経営改革を成功させるには目標のわかりやすさも必要だ。「インデックス400に選ばれる」というのは、社内の意識統一をしやすい、わかりやすい目標になるだろう。JPX日経インデックス400の導入により、優良企業とそうではない企業が明確に区別される時代が来た。新指数の存在が、各企業の情熱とプライドに火をつけることになりそうだ。
 
 

(ライター 河野陽炎)

 
 
 
 

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