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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
綿矢さんが作家として苦しい時期から脱するきっかけとなったのが、この冬映画が公開予定の『勝手にふるえてろ』だ。主人公の江藤良香は26歳のOLで、中学時代の同級生に片思いし続けていることから、未だ恋愛経験はなし。それがある日、職場の営業マンにアプローチされてから、理想と現実の狭間で揺れては時に暴走するようになり──という作品だ。周囲をやや斜めに、鋭く観察しつつも、自分自身は現実を上手く受け止められず、理想を追い求めてしまう。そんな主人公の姿は痛快であると同時に痛々しくも危なっかしくもあり、特に女性読者たちの胸に響く。この作品が生まれたきっかけや映画作品を見た感想についても、聞いてみた。
 
 

私もヨシカも青春まっ只中でした

 
『勝手にふるえてろ』は、長い間片思いをしている男性と身近な男性の間で揺れる女の人を描こうと思ってつくりました。ヨシカの人物像としては、恋愛をしているだけじゃなく、仕事もまぁまぁちゃんとしつつ、でも心は幼くて、いわゆる中2病を未だに引きずっているような人をイメージしています(笑)。
 
この作品を書いた時は、私もヨシカと同じくらいの年だったので、「学生の頃と比べると、だいぶ私も大人になったな~」と思っていました。でも33歳になった今、映画を見て書いた当時を振り返ると、シーンの端々から「私もヨシカも青春まっ只中だったんだな」と感じましたね(笑)。
 
今回、作品を映画化していただくにあたって、私からは何も要望は出していません。なので、自分が書いたものとどこが同じで、どこが変わっているんだろう、と気にしながら見ました。そうしたら、映画は原作よりもコミカルな要素がすごく良い感じに足されていて。ヨシカには可愛げも加わっていたので、それが嬉しかったですね。それから映画は小説と違って、生身の役者さんたちが演じているので、登場人物がみんないきいきとしているのが印象的でしたし、特に松岡茉優さん演じるヨシカが表情豊かで、とても惹きつけられました。映画も原作も、ぜひ楽しんで見ていただけたら嬉しいですね。
 
 
 
(インタビュー・文 青柳裕子/写真 Nori/スタイリスト Eri Soyama/ヘアメイク KOTOMI)
 
 
 
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綿矢りさ(わたや りさ)
1984年生まれ 京都府出身
 
高校在学中の2001年に著書『インストール』で、当時17歳にして第38回文藝賞を受賞し作家デビュー。早稲田大学在学中の2004年には、『蹴りたい背中』で第130回芥川賞を受賞。当時最年少の19歳で受賞を果たしたことから、一躍時の人となり、同作はミリオンセラーに。2011年には文藝春秋の『かわいそうだね?』で第6回大江健三郎賞も受賞している。以降もおよそ年に1度のペースで作品を発表し、映像化作品も多数。2017年の冬には、文藝春秋の『勝手にふるえてろ』の映画化作品の公開が控えている。
 
 
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文春文庫『勝手にふるえてろ』文藝春秋BOOKSサイト
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167840013

映画『勝手にふるえてろ』公式サイト
http://furuetero-movie.com
 
 
(取材:2017年5月)