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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

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コンサートなどの公演活動では、座長的立場を務める東儀さん。組織として理想の状態とはどんなもので、リーダーとしてどう振舞えば、みんなが楽しめる場をつくれると考えているのだろうか。
 
 

それぞれの個性を尊重することが大事

 
 映画に『トイストーリー』という作品がありますよね。作中に、いろいろなおもちゃのキャラクターが登場し、彼らはそれぞれ特技を持っています。例えば、兵隊人形の特技は戦うことであり、戦闘に関することなら誰にも負けない。そんな各々のキャラクターが際立って活躍するシーンがあるんです。つまり、作品内で一人ひとりの個性が重んじられている。こういう個々の個性が活きる場面ってワクワクしますよね。それは各登場人物の“誉れ”の瞬間が描かれているからだと思います。誉れあるキャラたちが活躍し、組織として1つにまとまっているところがあの作品の醍醐味。僕はいい仕事を生む組織の条件のヒントは、あの作品に内包されていると考えています。
 
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 僕の仕事になぞらえると、例えばコンサートにはたくさんのスタッフが関わります。演奏家、舞台監督、音響、照明・・・数え上げればキリがありません。そんなスタッフそれぞれに、誰にも負けないと自負している能力を発揮できる仕事を任せればいいんです。信頼して、安心して物事を任せられる人たちがいるからこそ、僕らも楽しく演奏ができる。その結果、お客様にも至福のひと時を味わってもらえるわけです。
 
 そのために大事なのは、それぞれの個性を尊重すること。僕が楽しんで演奏をできるのは、君のおかげなんだと、関わる全ての人たちに直接言わないにしても、感じてもらうことです。冗談交じりでもいいと思うんですよ。一人ひとりが代えのきかない大事な存在なんだと僕が思っていることが、おぼろげにも伝わっていると、「それなら東儀を喜ばせてやろうじゃないか」とみんなも楽しそうに仕事をしてくれるものです。
 
 僕はリハーサルでも本番前でも、個室で休まずにみんなが集まる場所に顔を出します。ご飯もそこで一緒に食べる。リーダーが自室に閉じこもっているよりは、軽口を叩き合えるくらい身近な存在のほうが、チーム力って高まると思っていますからね。
 
 常にコミュニケーションが取れていれば、ミスをした人物がいたとしても、自分から申告してくれるものです。報告しやすい雰囲気や空気が、組織の中に醸成されていますからね。そういう空気をつくるのもリーダーの仕事。だって、「俺にそんな話を聞かせるな、自分で処理しろ」なんて言われるよりは、ミスを早めに打ち明けて「大丈夫、何とかなる」と言ってもらうほうが、仕事もやりやすいでしょう? 
 
 
「みんなと一緒に楽しい時間を積み重ねていくと、いつの間にか信頼関係って生まれているものなんです」と語る東儀さん。しかし、社会の中、組織の中で生きづらさを感じている人が多いのも確か。東儀さんだったら、そういう人たちにどんな言葉をかけるのだろうか。
 
 

みんなと違うことは“誉れ”である!

 
 例えば、子どもにしても大人にしても、他人と自分を比較し過ぎていると感じます。「あの人はうまくいっているのに、どうして自分はだめなんだろう」とか、「どうしてみんながああなのに、自分だけこんなにうまくいかないんだろう」とか。それって、人と違うことに不安を感じているわけですよね。特に子どもは、「みんなと同じでいることの大切さ」みたいなことを先生に教わるから、それに違和感を持つと、孤立せざるを得ない。
 
 でも、みんなと違うということは、ただそれだけで“誉れ”なんです。人とは違う何かを持っているから、その部分においては活躍できることがあるかもしれないでしょう? それは『トイストーリー』のおもちゃたちと一緒なんですよ。人と違うことこそが誉れなんだと実感できれば、見えてくる世界がこれまでとは全く違ってくるはず。
 
 そんな自分にしか見えない景色、自分にしか感じられないかけがえのない体験や感覚。そんな誉れの積み重ねが、未来の自分をワクワクさせるための通過点なんです。他の人にはない特別な何かは誰にでもあるはず。自分を他人と比較する狭い世界から少し身を引いて眺めてみれば、人生を楽しく過ごせるきっかけは無限にあるものですよ。
 
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