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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

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今回のアルバムに限らず、高嶋さんは一般的に広く知られたナンバーをアレンジした曲を演奏することが多い。それは、クラシック音楽のファンを増やしたいという思いのあらわれなのだという。
 
 

お客様のニーズに応えたい

 
 これまで一貫して心がけてきたことは、クラシックファンを増やすための活動を続けようということです。若い方にはクラシックを聞かない人も多いですよね。だから、少しでもリスナーを開拓したいと思っているんです。そのために、このアルバムもオリジナル曲以外は、誰もが知っているようなナンバーを集めています。クラシックに興味がない方でも必ずどこかで耳にしたことがあるような馴染みのある曲を、聴きやすく短めにアレンジしている。
 
 例えばベートーヴェンの交響曲第9番「歓喜の歌」もかなり短めにしました。第9って本来は40分くらいの曲ですけど、本当に盛り上がるのは最後のほうのメロディーなんですね。だから、そこをもっと長く聴いてもらえるように、あえて引き伸ばしてみるとか、皆さんがこうあってほしいだろうなと思うようなことを想像して、アレンジを加えています。「クラシックなんて、眠くなりそう」と思う方もいるかもしれませんが、私のコンサートに来ていただければ、寝る間もないくらい次から次へと盛り上がる曲が聴けますよ。それでも寝てしまうお客様がいたら、私の負けですね(笑)。
 
 私はプロの音楽家として、お客様からお金をいただきながら仕事をしています。だから、自分の好きな曲で、自分自身を表現するために音楽をやっているわけではありません。アルバムやコンサートを通じて、お客様に楽しんでいただくことを一番の目標として仕事をしているんです。プロの音楽家として、お客様のニーズを的確にとらえた曲を演奏したい。それがご評価いただければ、自分の実績になりますし、目指しているクラシックの裾野を広げるという目標にもつながると信じていますね。
 
 そういう意味で言うと、私はアーティストではないんです。どちらかと言えば、「サービス業」という感覚で音楽活動をしている。ですから、自分が弾きたいと思う曲ばかりを選んで、自分自身は満足する演奏ができたとしても、お客様がポカンとした顔をしてしまっているようだと、私にとっては失敗です。いかに拍手をいただけるような演奏を披露できるか――。お金をいただく以上は、そこが勝負の分かれ目だと思っています。楽しい演奏を披露しますので、ぜひ、コンサートにいらしてくださいね!
 
 
 

(インタビュー・文 佐藤学 /写真 Nori/ヘアメイク 中田愛美)

 
 
 
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高嶋ちさ子(たかしま ちさこ)
8月24日生まれ。東京都出身。
 

6歳からヴァイオリンを始める。桐朋学園大学を経て、1994年にイェール大学音楽学部大学院修士課程アーティスト・ディプロマコースを卒業。1997年から日本で音楽活動をスタートする。常にお客様目線のコンサートを企画・プロデュースし、年間100本近くのコンサートに出演。全国各地で数多くの観客を集め、新たなクラシックファンを獲得している。

2015年7月1日には『Strings On Fire』をリリース。9月からデビュー20周年を記念して 高嶋ちさ子 ピアノクインテット『Strings On Fire』と高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニスト「Brillante」という2つのコンサートを開催予定。愛用器は1736年製のストラディバリウス"ルーシー"。

 
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 (取材:2015年6月)
 
 
 
 

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