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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

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「人付き合いに飢えている人はスナックに立ち寄ってみてほしい。スナックにはいい出会いがいっぱいある」と語る玉袋さん。その言葉からは、利便性の高い電子機器などが世に広まり、強いて他人と触れ合わなくても生活の全てが可能になりつつある現代社会に、何がしかの危機感を覚えているように感じた。
 
 

人の心はライフルで狙え

 
 僕はよく、「クリックよりスナック」って言うんです(笑)。パソコンでマウスをクリックすれば、友達を500人つくれるかもしれない。それはそれで悪いことではないけど、僕に言わせると散弾銃を撃っているのと同じ。やっぱりさ、人の心は狙いを定めてライフルで撃ち抜かないとね。クリックするよりも友達は増えなくなるかもしれないけど、友達の数なんて片手の指の本数だけでも足りるもんです。
 
 では僕がどんな友達と飲むかというと、例えば芥川賞作家の西村賢太先生とは同級生ってこともあって、よくご一緒します。おもしろいですよ、あの人と飲むと。いつもお互いに、相手のいいところをずっと誉め合ってるの。「あんたのほうがすごい」「いや、あんたのこういうところのほうが・・・」なんてね。それを繰り返しているうちに、気付いたら喧嘩になってたことがあるくらい(笑)。「あんたのほうがすごいって言ってるだろ!」とか言って胸倉つかみ合っちゃってさ。お互いのことが好きすぎても、そうなることがある。そんな時はほんとに、「人との距離感って大事だなぁ」って思います。
 
 西村先生とのケースは特殊だけど、相手がインファイターだったら、こっちがアウトボクサーになることも必要。相手に合わせてインファイトしちゃうと、痛い目に合うケースもあるからね。だから、しらふの時でも人との距離感は常に意識しているかな。でも、根が寂しがり屋だから、一緒にいて楽しい人とは、本当は常にベタベタしていたい(笑)。そういう性格なので、なるべく相手の懐に入り込み過ぎないように、意識して人と距離を取るようにしているんだと思う。ある他人のことが好きになって、その人に自分の軸足を乗っけていたら、突然裏切られたこともあるからね。そんなわけでさっきも言ったように、僕は気を許せる友達って少数精鋭でいいと思っている。たくさんの人と話したい時はスナックに行けばいいしね。もちろん、そこに行った時だけ会える友達もいるという楽しみもあるから。
 
 
安くてどこにでもあるチェーン店が隆盛する時代の流れもあって、次第に薄れつつあるスナック文化。玉袋さんは「スナックは日本固有の文化であり、なくてはならぬものだ」という使命感で全日本スナック連盟の会長として啓蒙活動を続けている。
 
 

身の丈で生きる、見習うべき店主たち

 
 スナックは全国におよそ、10万軒あると言われています。興味がない人、行ったことない人! 扉を開けない食わず嫌いはもったいないですよ! 行ってみて肌に合わなければ、別の飲み屋にいけばいいんです。試しに足を踏み入れてみるだけでも、今までになかった自分のマップが広がるはず。ゲームでいうところの、裏面みたいなもんですよ(笑)。自分の町に裏面がたくさんあるのに、そこを通り過ぎるだけなんて、もったいないじゃないですか。スナックは必ず何かを体感できる、パワースポットです。だから思い切って扉を開けてほしいですね。ママやマスターが温かく迎えてくれますから。
 
 何が素晴らしいって、ママやマスターは金儲けをしてセレブになろうなんて考えていないんです。自分の身の丈に合わせた生き方をしている。そういう方々が一生懸命お店を切り盛りしている姿を目の当たりにしつつ、お店にいる皆さんと楽しく交流できれば、自分の励みになるでしょ? アイドルや俳優、アスリート、そういうスターに憧れる気持ちもわかります。僕も自分の師匠、つまり殿(ビートたけし氏)が大好きだし憧れているから。でも、自分の暮らしている半径数百メートルのところにも、輝いている見習うべきスターがたくさんいるってことに気付いてほしいなぁ。
 
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