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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

築いてきた実績や経験を
社会貢献につなげる求心力

 
 
石井氏は現役時代から、チャリティー活動や社会貢献活動などに力を入れてきた。特に、選手として大きな活躍を続け、自身に当てられるスポットライトが強くなればなるほど、その光を周囲に照らし返したいという思いが芽生え、その思いを積極的に行動に移してきたように思えるのだが。
 
 

生まれ故郷への恩返し

 
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 現役時代から私は、自分の経験やプロ野球選手の立場からできることを、何らかの形で社会に還元することはできないだろうか――と考えていました。
 それで、2000本安打を達成したことをきっかけに、2007年に私の生まれ育った故郷である栃木県佐野市に「琢朗アスレティックアカデミー」 というスポーツスクールを立ち上げ、その校長に就任しました。地元の方々にはたくさん支えてきていただいたので、何か恩返しがしたかったのです。そのスクールでは、レッスンの対象となるのは小学生以下の子供たちです。子供たちに自分の持つ可能性に気付いてもらえるような、そんな影響を与えられる場であることを理念に取り組みを続けています。
 アカデミーの教育で大事にしているのは、子供たちの可能性を広げることと、心の育成です。野球の技術を高めることは第一の目標ではありません。ですから、レッスンも野球だけ教えるのではなく、様々な遊びやスポーツを経験して、上手な身体の使い方を学んでもらえるようなプログラムを組んでいます。楽しんで身体を動かしていく中で子供たちそれぞれに、自分の秀でた能力を自分自身の力で見つけ出してもらうことが理想です。最終的に野球の道に進んでもらわなくても構わないんです。サッカーでもバスケットボールでも、なんでもいい。子供たちの可能性は無限大。未来のある彼らにとって、選択肢は無数にあるのですから、こちらから強いる必要はありません。子供たちが自分の持っている可能性に気付き、力を引き出すきっかけや影響を与えられるようにお手伝いをするのが 「琢朗アスレティックアカデミー」 の役割だと思っています。
 そして心の育成で重要視しているのは、躾です。「こんにちは」 「ありがとうございました」 など元気よくあいさつすることや返事をすることの大事さ。友達と一緒に物事に取り組む協調性、そして、両親や周囲の方々を大切にすることなどですね。他者に対する感謝の気持ちなどを身に付けてもらえるように働きかけています。
 
 
 
「琢朗アスレティックアカデミー」 では、一人の個人としての可能性を引き出すことを重視する――。この施設の理念の中に、石井氏が現在のコーチ職で心がけている姿勢の原点が垣間見えた。また、石井氏が自身の影響力を社会貢献につなげていこうとする活動はそれだけには留まらない。
 
 

被災地に希望を与えるミッション

 
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 社会貢献やチャリティー活動は現役を引退した現在も続けています。たとえば、東日本大震災による被災地の方々への支援もその一つです。現在進行中のものでは、健康グッズメーカーのファイテン株式会社さんと私がコラボレーションし、引退記念チャリティネックレスを通じて、福島県の子供たちをマツダスタジアムに招待する企画があります。クラウドファンディングをご存知ですか? ある目的を持った人や組織への資金を、ネットを通じて目的に賛同する支援者から募るものです。広島の企業が運営するクラウドファンディングサービスのMISSION BOXを利用して、限定ネックレスをご購入いただき、その収益の一部で福島県在住の子供たちを広島に招待するんです。
 招待した子供たちには広島観光や野球観戦をしてもらって、元気になってもらえたら嬉しいですね。それに、原子爆弾の被爆地である広島の現在の復興ぶりを目の当たりにし、肌で何かを感じてもらえれば、子供たちに勇気や希望も与えられるのではないかと思いますので、ぜひ達成したいミッションなんです。
 また、2013年3月26日に 『心の伸びしろ』 と題した本を株式会社KKベストセラーズさんから出版しました。株式会社VALUEBOOKSさんと陸前高田市との共同プロジェクト 「陸前高田市図書館ゆめプロジェクト」 に賛同し、MISSION BOXで販売した本の売り上げの一部を、陸前高田市の図書館建設費用として寄付させていただきます。東日本大震災の津波で甚大な被害のあった陸前高田市の図書館の再建支援ができることは、私にとっても喜ばしいことです。こちらはたくさんの方々の支援により、大変ありがたいことに、目標設定額に達することができました。
 世界的な著名人の方々の発する言葉には、良くも悪くも影響力がありますよね。何気なく発した言葉が取り返しのつかない事態を引き起こすことも。だから、私は言葉というものを大事にしていますし、自分の発言には責任を持たなければならないと思っています。ただ、喋ることで自分の考えや言いたいことを伝えるのはちょっと苦手なので、ブログなどを通じて自分の率直な思いを発信しているんです。考えや目標、心がけていること、日常のことでもなんでも、活字にするのはいいですよね。書き終えた文章を後から自分で何度も確認して、納得のいく言葉を世の中に送り出せますから。
 
 
 
 

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