B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

40代の男たちがこの時代に
モチベーションを上げる術

 
 
モチベーションが上がらない理由について、まずは思い込みを排して自己分析すべし――そう語る和田氏は、心の病の他にも、生物学的あるいは心理的要因のそれぞれについて、詳しい対処法を教えてくれる。40代以降のビジネスパーソンの誰もが直面する “ありがち” かつ身近な悩みへの解答であるだけに、他人事とは思えない読者は多いだろう。
 
 

生物学的要因・心理的要因

 
20130201sp_44ex02.jpg
 次に、生物学的な老化です。言葉だけ聞くと、お年寄りの問題のようにイメージされるかもしれませんが、実は我々の脳は生物学的に40代から前頭葉の委縮が始まり、動脈硬化も始まります。特に、前頭葉の委縮について言うと、前頭葉は感情活動につながる部位ですから、感情の老化も引き起こします。もっと言うと、これまで日本では社会的に無視され続けてきた男性更年期の問題も考えられます。40代になると、テストストロンという男性ホルモンの減少が始まることが多い。それにともない、いわゆる “男性らしさ” と同時に、意欲、好奇心、性欲といった欲求が減ってくるのが男性更年期の特徴です。
 男性ホルモンは人間の攻撃性を司るものですから、それが減少していけば、「ライバルに勝とう」 とか 「ミッションを達成しよう」 という意識は薄れていきますし、異性にモテたいという感情も失われていきます。
 でも、ホルモンの減少への対処はともかく、前頭葉の機能低下を食い止めることは可能です。確かに筋肉と違って、脳は加齢とともに神経細胞が減るとされていますが、筋肉と同様、使うことで機能の衰えが防げます。前頭葉は “昨日とは違う状況” に対処する際に活動する部位ですから、ようは、ルーティンに入らない仕事を、率先してすればいい。職場の状況によってそれが難しいなら、たとえば週末起業にチャレンジしたり、あるいはFXなどのハイリスクな投資に手を出してみるのも良いでしょう。不倫はマズいでしょうが、恋愛をするのも一つの手です。とにかく予想外のことが起こる環境に身を置くことです。
 三つめは心理的な要因でしたね。40代にもなると、「どうせダメだろう」 とか 「どうせ出世しないだろう」 とか、サラリーマン生活の中で味わう限界体験からくる学習性無力感が身につくことがあります。心理的にこれに対抗するには、端的に言えば、どこかで成功体験を得るべきです。今までと違うやり方で成果を上げてみるとか、ルーティン環境でしか働けない人であれば、プライベートで何かの資格を取ってみるとか。とにかく、何らかの形で、“自分もまんざらではないな” と自覚できる心理的体験を確保することが必要です。
 
 
 
本来なら時代ごとの経済を支える中心的存在になるはずの、40代のビジネスパーソンたち。その彼らが、特に心理的問題を抱えてしまうのは、個人的な事情にのみ起因するのではなさそうだ。和田氏いわく、根本的な原因は、ビジネス環境の変化や、求められるリーダー像の変遷などといった現代的文脈において読み取ることができる。
 
 

「勝ち組になれ」の真意

 
20130201sp_44ex03.jpg
 ビジネス環境の変化も要因として大きいでしょう。たとえば、成果主義というものは、そもそも数値評価や報酬といった外発的要因に仕事の意義を見出してきた欧米人に合う考え方。それに比べて日本人は、民俗的にも精神文化的にも、「職人気質」 とか、「仕事が好き」 とか、「仲間のために」 とかいった内発的要因が、仕事に向かう原動力になっていました。それが今や――私は経団連のたくらみだと考えていますけど――アメリカから思想輸入してきた成果主義がすっかり浸透させられてしまいました。現在では、内発的要因に重きを置いて仕事をしていると、企業と資本家に労働力を買い叩かれるだけです。本来合わない動機づけなのに、数値評価でモチベーションなんて上げられないですよ。だから、自分なりの動機づけを会社の中に見つけられないようであれば、心理的な生活の軸は外に置いたほうが賢明だということです。
 さらにいえば、男性の更年期などは、昔は違う形でちゃんと、社会の中における位置取りが確保されていました。企業でも 「あの部長も若い時分はバリバリの営業マンだったのに、すっかり丸くなっちゃったね」 なんて、テストステロンが減って好々爺になった上司が部下の話をよく聞く調整型リーダーとして認められる雰囲気があったんです。しかし今は、丸くなるとリストラの対象にされるだけで、50代になっても人とぶつかりながらバリバリやっているアメリカ型か、あるいは “島耕作” みたいなリーダーが求められるようになっています。ビジネスの世界に限らず、「成功しなければ意味がない。負け組ではダメなのだ」 という風潮が蔓延しています。そんな社会で働きがいを見失う人はますます増え、格差がさらに広がっています。
 私は、受験を勝ち抜く方法や成功する仕事術の本をたくさん書いていることから、「和田は勝ち組礼賛論者だ」 と思われていますが、逆です。はっきり言っちゃいますが、私は共産主義者――まではいかない、ラジカルな修正資本主義者――ですから。格差はあるべきじゃないし、貧富の差もないほうが良いに決まってる。ただ、理想の社会を思い描くことと、現実社会をどう生き抜いていくかを考えることは別な話です。福祉も公もほとんど機能していない現在の日本では、負け組になってしまうと救いがありません。だから勉強して努力して、勝ち組になろう。そう言っているのです。 
 
 
 
 

スペシャルインタビュー ランキング